第93話 case 4-銀色シャーペン
“肩ぶつけ合いモールス信号”
さっき、コンビニで2人が発明した無言でのコミュニケーション方法である。
ゆっくり歩きながら、既に数分間続けている。
「「誕生日って」」
声が揃った。
「「ハハハハハ、ハッハッハッ、ハハハハハ」」
「昼休みと同じだ〜」
「だねぇ、またリンクしたねぇ」
「あぁ〜、面白ぉ」
「央吾君の誕生日は?」
「7月16日、佐々木さんは?」
「10月3日、央吾君来月なんだね」
「うん。佐々木さんの誕生日は10月3日、ちゃんと覚えましたぁ」
「アハハ、覚えててねぇ。私も7月16日覚えましたぁ」
手をしっかり繋いだまま、チラッチラッと目を合わせ笑い合う。
「そうそう、これ使って」
央吾は銀色のシャーペンを佐々木に手渡した。
「やったぁ、ありがとうっ。って重」
「重いでしょ?設計士用のシャーペン。慣れるとめっちゃ書きやすいんだけど…使い難いかな?」
「ううん、私も慣れるまで使ってみるね」
「俺もスヌーピーのシャーペン大事に使うから」
「ちょっと汚れちゃってるけどね」
「そんな事ないよ。大事に使ってた証拠だよ。それに付き合い出した記念が、レモンののど飴じゃあ格好悪いからね」
「アハハ、美味しかったけどね」
2人はこの時間を楽しみたいあまりに、歩くスピードはどんどん遅くなり、ほぼ止まっている。
「央吾君、設計士になりたいの?」
「うーん、まだはっきりとは言い切れないかな…興味はあるけどね」
「そっかそっか、じゃあ理系だね、特に数学頑張んなきゃね」
「そうなんだけどねぇ…数学がねぇ…」
「?苦手なの?」
「はい…苦手ですハハ」
「こないだの中間テストどうだったの?」
「…、…、…、35点です…、…」
「っさ…、…、…」
佐々木は驚きのあまり目を見開き、固まった。
「佐々木さんは、どうなの?」
「私は全教科80点以上ですっ」
腰に手を当て誇らしげに言った。
「80以上っ!?凄っ!!俺、一番良かったのでも70点ぐらいだったわぁ」
「よしよし、これは土日の部活が無い時は図書館で勉強ですな」
笑顔だが口は真一文字の佐々木に対し、挙手をした央吾は、
「部活が無い時は時々デートもしたいです…」
「ハハハハハ、それは私もです」
佐々木も挙手して顔をほころばせた。




