第90話 case 4-刃牙の最新巻
央吾は早々に部室を出て、他の部員よりも一足先にコンビニに向かった。
正門を出て東側にある約束のコンビニへ急いだ。
佐々木はまだ来てない。待ってくれているとばかり思っていた央吾は少し肩透かしを食らったが、まあ良い。
(塾が長引いているのかも?彼女を待つ俺。そんな余韻に浸ろう)
とりあえず立ち読みでもしようと店に入り、右側の雑誌コーナーへ。
「おっ、刃牙の最新巻出てるじゃん」
格闘技漫画は男子全員が好きである。
直ぐに手に取り1ページ目を開いた。
「何読んでるの?」
央吾の右肩にドンッと可愛い衝撃。
央吾の顔と単行本の間にスッと佐々木の小さな後頭部が視界を半分ぐらい遮った。
(近っ、可愛いっ、めっちゃ良い匂い〜)
「何これ?怖っ」
女子にはこの面白さが伝わらない。
兎に角、男たちが殴り合って血が出てる時点でアウトの様だ…。
「刃牙、知らない?知らないか?」
「全然知らない。男子好きそぉ〜ハハ」
「東京ドームの地下に格闘技場があって、そこで何でもありの格闘技っ」
央吾はそう言いながら、右肩で佐々木の左肩をドンッドンッと押し返した。
「へ〜」
佐々木も負けじとさっきよりも強く押し返してくる。
お互いの肩をぶつけ合いモールス信号の様にコミュニケーションを取っている。
「へ〜ってハハハ、興味なさそぉ〜、今来た?」
「ううん、デザート何食べようか迷ってたら、央吾君が入って来たから、こっそり後をつけましたハハ」
「ハハそうだったんだっ、全然気付かなかった。ごめん、ごめん。結構待った?」
「全然待ってないよ、2、3分前に来たとこ」
央吾は単行本を棚に戻し2人で店内をぐるぐる回る。
「いつもコンビニ寄るの?」
「う〜ん、たまに。央吾君たちいつも居るよね?」
「え?知ってたの?」
「うん、塾の帰り道だからね」
「そうなんだ。俺は部活帰りは毎日かなハハ。多分ボチボチ野球部の奴らも来るよ」
2人は会話を楽しむ様に店内をゆっくりと歩いた。
「央吾君はいつも何食べるの?」
「う〜ん、特に決まってないかなぁ。その日の気分でおにぎりかパンかって感じ。佐々木さんは?」
「私はいつもデザート。シュークリームかエクレアか…プリンとかクッキーとか?かな?」
結局、央吾はおにぎり、佐々木は大きなシュークリームと烏龍茶を手に取りレジへ向かう。
「一緒でいいよ」
半歩前に出ていた央吾が佐々木に言うと、
「じゃあ遠慮なくハハハ、やった〜」
佐々木は央吾の真横に並びシュークリームと烏龍茶をヒョイと出した。
央吾は追加でからあげクンを注文し、会計をしていると、
「いたぁ、いたぁ!」
「お似合いカップルがいるよ〜っ」
「あの子がオーゴの彼女?」
「あんまり茶化すなよ、付き合いたてホヤホヤなんだから」
「お邪魔しまぁ〜す」
やって来たのは、野球部1年の冷やかし男子。
店に入ると右側の雑誌コーナーに直行。
央吾たちの視界からは直ぐに消えた。
「うわっ!刃牙の最新巻出てるじゃんっ」
「店の中でうるせぇよ、お前ら」
「ハハハ央吾君と一緒だっ、皆んな仲良いんだね」
「とりあえず外出よう、あいつらうるさいわ」
「ハハハ楽しそうな人たちだね」
出入り口で雑誌コーナーの方をチラッと見ると、冷やかし笑顔で茶化してくる。
佐々木は野球部軍団に笑顔の会釈で対応した。




