第88話 case 4-確認
実は2人にはこのむず痒さが心地良かった。
「本当言うとね…さっきの体育館での告白って現実だったのか心配だったんだよ。でも階段降りて来て角曲がったら、廊下で待ってくれてる央吾君が見えてね。あぁ、やっぱり夢じゃなかったんだって安心したの」
「ほんとに?俺も全く同じだよ。まさか佐々木さんからオッケーもらえるなんて思ってなかったからハハハ」
「え〜?何で?だって私から声かけて写真撮ったじゃん」
「でも相手があのユージローだったからさぁ、めちゃくちゃビビってたよハハ」
…、
…、
…、
…、
「私たち、付き合い出したんだよね?」
「そうです。佐々木さんは俺の彼女です」
ベンチに横並びに座っている2人はチラッと目が合うと同時に恥ずかしそうに前を向き、笑い合った。
「いやぁ〜、さっきの授業中ずっと不安だったからさぁ、小テストやばいかも、今になって不安になって来たハハハハハ」
「えっ?教科は?気持ちは分かるけどねハハハ」
「数学」
「よしよし、じゃあ勉強も一緒にしなきゃだね」
「ありがてぇ」
藤の花の薄い紫は霧雨により、より淡く幻想的な空間へと変わり、外から聞こえてくる雑踏を消し去り2人だけの世界へといざなった。
お互いに曖昧だと感じていた現実を確認し合い、安堵した2人は、それまで物理的に生じていた互いのスペースを埋め肩と肩を触れ合わせた。
2人とも、その初めて味わう充実感をしばし無言で噛み締めた。
…、
…、
…、
「そうだ、もし良かったらこれ使って」
佐々木は胸ポケットに挿してあったシャーペンを央吾に手渡した。
「おっ、いいの?可愛いっ、スヌーピーじゃん」
「ずっと使ってた物だから、ちょっと汚れちゃってるけど。女子過ぎる?」
「全然そんな事ないよ。でも大事なやつなのに?いいの?」
「大事な物だから、いいの。付き合いだした記念に、どうぞ」
「ありがとうっ、じゃあ俺も何か…」
央吾はポケットの中を漁ったが…出て来たのはレモン味ののど飴。
「これ、いる?」
いらないよねぇ?と思いながらも聞いてみた。
「いただきまぁ〜す」
少し残念そうに、でも少しおどけながら、佐々木はのど飴を受け取った。
「ごめん、ごめん。これじゃあ記念にはなんないよねぇ。明日俺もシャーペン持ってくるから」
「いいよ、いいよ。飴でも十分なんだけどね…。
でも…、明日じゃなくて…、今日一緒に帰りたいなぁ」
佐々木は飴を舐めながら、恥ずかしそうに提案してきた。
「うん!もちろんっ!」
央吾は嬉しさのあまり、笑顔が溢れ出す。
心の底から喜んだ。思わず拳を握り、親指だけを立てて、グッドポーズをしてしまう程だ。本当に嬉しそうな央吾の顔を見て佐々木はクスクス笑った。




