第82話 case 4-勢いで
ユージローファンたちは、さっきまでの固唾を呑む状況とは打って変わって、騒ついていた。
「誰あれ?」
「知らない」
「背、高いね」
「3組の子よ、確か…」
「佐々木さんでしょ」
「そうそう、テニス部の」
「色黒ね」
「テニス部は日焼けするよねぇ」
「ユージロー君、色黒がタイプなのかなぁ?」
「そこじゃないんじゃない?」
「私も日焼けしようかな」
「この辺、ヒサロなんてある?」
「え〜、私焼かないことばっかり考えてた」
「この美白は手放したくない…」
「だから、そこじゃないでしょ?」
「普通に可愛いじゃん」
「え?そうかなぁ…」
「ユージロー君、彼女出来ちゃったぁ〜」
「まだ分かんないでしょ?」
「いやいや、断らないでしょ?普通」
「ロングヘアがタイプだと勝手に思い込んでた」
「何でよ?」
「?ユージロー君坊主だし」
「どんな理屈よ」
「悔しいっ、悔しいっ、悔しいっ」
「私だったら即オッケーなのに」
「あんたは無いでしょ」
「何でよ?」
「…体格が…ほら…ねぇ」
「何よぉ〜、今から痩せるんだからっ」
「いつからダイエットするの?」
「明日から」
「…、…、…」
ユージローが佐々木へ告白してから数秒間のやり取りである。
女子たちの高速やり取りは凄まじい。
騒つくユージローファンの事などお構いなく、ユージローは佐々木を真っ直ぐに見つめ仁王立ちしていた。
その姿は告白の時のたどたどしさは消え去り、思い切りの良い告白だったとさえ思えて来た。
急な告白をされた佐々木は、固まっていた。
そして、央吾はと言うと…
非常に焦っていた。
(焦ったぁ〜っ!マジで焦ったぁ〜っ!佐々木さんへの告白だったんだな。俺に告ってくんのかと思った…まあ、それは無いかハハ。ってか、あんな長い時間手握る必要なかっただろっ。しかも握力強過ぎんだろっ。何だよ72って、リンゴに穴空くぞ。いやいや、そんな事考えてる場合かっ!この状況…、…、ユージローってヤスベぐらいのモテ男だろ…、佐々木さんもしかしたら、オッケー出すんじゃないか…顔めっちゃ赤くなってる?嬉しいのか?困っているのか?どう言う表情だ?これはっどう言う表情なんだぁ〜!!…、…、
あれ?…、“お前はどうする?”あのユージローの言葉って…、…、…、てっきり、俺は付き合うかどうかをどうするのか?それを聞かれてたんだと思ってたけど…、…、…、…、ちょ、ちょっ、)
「ちょっと待ったぁーーっ!!」
振り向きざまに央吾は放った。
「出たぁ!オーゴのちょっと待ったコール!!」
ナオトがすかさず割り込んで来る。
全員が一瞬で思いついた事を、直ぐに口にしたナオト。
体育館内は「お〜っ!うぉ〜!」と大盛り上がりだ。
(ねるとんかよっ、ナオトのやつ。って言うか、
勢いで言ってはみたものの…)
最近、気になっていた佐々木に対し目の前で突然の告白を決行された央吾。
完全にノープランであった。




