第78話 case 4-ラストワンプレイ
残り時間あとわずか、ユージローがドリブルで切り込むと見せかけてからのジャンプシュート。
久々のジャンプシュートが決まりバスケ部軍団が2点を勝ち越した。
この時点で、時計の針は試合終了時刻である50分を指しており、そのまま試合終了かと思われたが、
「ラストワンプレイだっ!」
ユージローのその言葉で両軍団のギャラリーが沸きに沸いた。
その熱量はコート上全員の背中を押した。
体が温まって来て、ますます動きが良くなっている野球部軍団。対して、慣れない裸足でのバスケに疲れが見えて来たバスケ部軍団。
ラストワンプレイでバスケ部が守り切るか、それとも野球部が追い付くのか、いや逆転するのか。
注目が集まった。
ドリブルでボールを運ぶ央吾。
その央吾にマークに着いているのはユージロー。ユージローはバックターンで央吾に抜かれてからはスティール狙いは止め、ドリブルで抜かれないよう少し距離を取りディフェンスしていたが、更に距離を取っていた。
かなり央吾のドリブルを警戒している様だ。
(オーゴはあくまでも攻撃の起点。自分では仕掛けてこない。常に周囲の状況を確認し、シュートチャンスのある誰かにパスを出す)
ユージローはそう考えながら、ドリブルをしてくる央吾の目を見る。
央吾の目は真っ直ぐ前を向き、パスを出す先など探していない。
パスを出す事など微塵も考えていないドリブルだ。
(自分で切り込んでくる…?、、、いやお前は必ずパスを出す。2点ビハインドの状況で、ラストワンプレイ…同点?いや、必ず逆転を狙ってくる。そう、スリーポイントを打てるヨータにパスを出す。絶対…必ず)
ユージローがここまで言い切れる理由。それは、ボールを持った瞬間に央吾がヨータの位置を確認していたからだ。ユージローはその一瞬を見逃さなかった。
そして、それを央吾に悟られぬ様にわざと央吾との距離をとり、ドリブルを警戒している振りをしていたのだ。
(あとは、どのタイミングでパスを出すか…)
ユージローは央吾から出るヨータへのパス。
それだけを狙っていた。
リングに向かい真っ直ぐにドリブルしていた央吾だったが、徐々にスピードを緩め始める。
ユージローとリングを交互に見ている央吾。
央吾の目線がユージローの左手に落ちる、その瞬間…
ユージローの視界に入って来たのは、央吾の右手方向、真横にフリーになったヨータの姿。
央吾がヨータと逆方向に視線を向けた時、央吾のボールを持った手はヨータへのパスを開始した。
(今だっ!)
この瞬間を待っていたユージロー。狙い澄ましたユージローは瞬時に央吾に接近し、左手はパスコースを完全に塞いだ。
(?…?出さない?)
その時、央吾とユージローが接触。
央吾はその状態でシュートを放った…
パサッ
「キャー!!」「ワーッ!!」「オー!!!」
空気中の水分を電気が伝い、酸素が激しく振動するかの様に、体育館全体が沸騰した。
「だぁーっっっ!!」
央吾が吠えた。
「シャーーー!!」
「オーゴォォォ!!」
「をぉーっ!!!!」
「同点だぁっっっっっ!」
野球部軍団も吠えた。
体勢を崩しながら放ったシュートはリングに当たる事なくネットを揺らした。




