第70話 case 4-フジヤマ イズ ノーセンス
昼休みも終わるため、皆んなで教室に戻っていた。
「オーゴ、最近凄ぇなぁ」
「先週だろ?告られたの?」
「いや、2週間前な。って言うか、ヤスベの方が凄ぇだろ」
「今、何人に告られたの?」
「5人」
「マジ!?聞いてねぇよ」
「いちいち言わねぇだろ」
ヤスベはオーゴとは比べ物にならないぐらい、フィーバーしていた。
部活中や昼休みのバスケ中にはヤスベ目的のギャラリー数名。
落とし物を届けに他のクラスに入っただけで、女子たちはざわつくどころの騒ぎではなく、パニック状態。
「ずりぃなぁ、お前らばっか」
「ずりぃ、って言われてもなぁ。なあオーゴ?」
「そうだな」
央吾とヤスベはニヤニヤしながら、自慢気に皆んなの顔を見渡した。
「まあナオトは無理だな」
「コタニ、お前には言われたくねぇよ」
「ハハハハハ、ハハハハハ」
央吾とヤスベは余裕の笑いである。
「あ、鼻血止まった」
央吾は鼻からハンカチを離すと、ハンカチをじっと見ていた。
「湘北色に染まり過ぎじゃね?」
「ただの血だろ。回りくどい言い方すんなよ」
「佐々木さん?あの子、海南好きなのかなぁ?」
「違ぇだろ」
ナオトはやっぱりバカだ。
「この血、ちゃんと落ちるかなぁ…」
「乾いたら無理だな。早く水で揉んだ方がいいよ」
「そうなの?さすがヨータ」
ヨータは兄弟が多い分、自分の事は自分でしなければならなかった。
生活の知恵レベルは央吾の仲間内ではトップだ。
「って言うかさ、さっきオーゴが明日もバスケがしたいですって言ってたけど、明日土曜だぞ」
「ノリだよノリ。そんな細かい事はどうでも良いだろ…」
「確かに。土曜だからってバスケ出来ねぇわけじゃねぇしな」
こんなどうでも良い様な話をしながら、各々のクラスへ散って行った。
央吾はヨータに言われた通りハンカチを水で洗ってみた。かなりキレイにはなったものの、そのまま返すには微妙に汚れが残っていた。
そして、部活帰りいつもの様にコンビニで買い食いしながら皆んなでウダウダやっていた。
「明日の練習昼からだから、午前中にハンカチ買いに行きたいんだけど、スグル一緒に来てよ」
スグルはお洒落でセンスが良い。
「悪りぃ、明日は無理だわ。手伝い言われてんだよ」
「マジかぁ…」
スグルの家はこの辺りでは大きな本屋。
運搬に陳列、色々やる事があるらしい。
「佐々木さんにあげるやつ?」
「そうそう、血がちゃんと落ちなかったから」
「じゃあ、ちゃんと奮発しないとな」
「あぁ、そうだな」
「あのハンカチ、結構良いやつだぞ」
「えっ!?そうなの?」
「バーバリーだよ、知らないで使ってたの?」
「…知らねぇ…」
「マジかよ、バーバリー今めっちゃ流行ってんじゃん」
「ちなみに、予算はどれぐらい?」
非常に流行りに疎い央吾は恐る恐る、スグルに値段を聞いてみた。
「物にもよるけど、4〜5,000円」
「はっ!?…ハンカチ1枚で5,000円!?」
「もしかして、フジヤマとか行って買おうとしてねぇよな?」
フジヤマとはこの辺りで有名なスーパー。
生鮮食品やゲームやおもちゃ、衣類等、何でも揃う複合型のスーパーである。
思いっ切りそのつもりだった央吾…
やっぱスグルに相談して良かったぁ、と心から思った。
「流石に、フジヤマはセンス無さ過ぎだろ」
「だよなぁ…ハハハハハ…」




