第68話 case 4-バスケがしたいです①
央吾の高校生活は順調その物だ。
ある日の昼休み、央吾たちはいつもの様に体育館でバスケット(3on3)をしていた。
「バスケがしたいです」
「今やってるだろ」
「安西先生どこだよ」
「今日は俺が三井だっ」
ヨータがスリーポイントシュートを打ったが、見事に外した。
「ハハハハハッ」
「リングにすら届いてねぇよ」
「俺、左利きだからやっぱり藤真の方が良いな」
「ヘイヘイ、パスパス!」
央吾がパスを呼んだ時だった。
「央吾君…」
振り向くとそこには見た事のない女子3人組。
「オーゴッ!」
再度、声の方へ向くと既に目の前20cmの辺りにボールがあった。当然避けられるはずもない…。
ドコッ!
鼻に直撃。マンガかよ…鼻、痛っ!
その瞬間、鼻から唇の端に流れる液体の感触。
ヤバッ、鼻血だよ…
思わず手で押さえてみると、やっぱり手が真っ赤になった。
「急にどこ見てんだよっ」
「試合中によそ見すんなよな」
「いや、まあそりゃそうなんだけど、鼻血の心配しろよ」
真っ赤になった手のひらを見せながら央吾は首を傾げた。
「鼻血ぐらいで心配しねぇだろ」
「気合いだっ、気合いで血を止めろ」
「どうやってだよ、気合い入れたら余計に出そうだわ」
ポタポタ落ちる鼻血が制服に着かない様、前屈みになりながら央吾はとりあえず外に出た。
「ごめん、私のせいだね…これ使って」
央吾が前屈みのまま、視線を上げるとさっきの女子が白と紫と黄色のチェック柄のハンカチを差し出していた。
海南カラー…?それが央吾の第一印象だった。
高身長の細身、ショートカットで色黒。
目はクリクリで子犬の様。
申し訳なさそうな顔で央吾の顔を覗き込む様に見ていた。
か、可愛い…それが央吾の第二印象だった。
「いや、でもハンカチが…」
「いいから…」
そう言うと、その子は央吾の鼻に海南カラーのハンカチを優しく押し当てた。
…数秒間固まった…
「あ、ごめん、自分で押さえるわ」
ふと後ろの女子2人がニヤニヤしているのに気付く。
ただ、嫌なニヤニヤではなく、女子特有の応援ニヤニヤだ。
央吾は読唇術は出来ないが、その2人が何を言っているのかが分かった。
「今よ、今」
「ホラホラ」
指をさすジェスチャー付きで非常に分かりやすい。
海南カラーハンカチ女子が恥ずかしそうに振り向いた。
「変なタイミングで呼びかけてごめんね…一緒に写真撮ってほしいなぁ、と思って…」
はにかみながらそう言った彼女の顔は色黒ながら赤くなっているのが分かった。
「え?俺と?…別にいいけど」
央吾の返答を聞くや否や、後ろの応援女子が使い捨てカメラを持って駆け寄って来た。
「はいチーズ」
これを言われると、ピースをしてしまう。
それは全国共通だ。
央吾は右手の海南カラーハンカチで鼻を押さえたまま、左手でピースをした。
「もう一枚、はいチーズ」
2枚目の時、海南カラーハンカチ女子が半歩だけ央吾の方に近寄ると、お互いのピースの手が触れ合った。
うぉ〜!!俺、青春してるわぁ〜!!




