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人間体験  作者: hi07


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第64話 case 4-本当の事

…?…、あれ…?母は…?


外はもう明るい…、朝…?


夢…?…、…、だったのか…?


寝てた…?ただの妄想か…?


さっきまでそこで話しかけて来ていた母が居ない。

階段を降りている音どころか気配もしない。

あんなに背中で気配を感じていたのに…


布団の上であぐらをかき天井を見上げた。


「イチローかっけぇ」


ガチャ


玄関の扉が開く音。外から誰か入って来た。


トトトトト、トトトトト


そのまま階段を上がって来る。


「央吾、起きなさい。ゴンギョウの時間よ」


母は央吾の部屋を覗くと、


「珍しい、起きてたの?」


「え?…、あ、うん」


央吾の返事を聞く事もなく、母はテンショウサマの部屋に向かった。


恐る恐る央吾もテンショウサマの部屋に行くと、

ゴンギョウの準備をしている母を不思議そうに見ていた。


「何してんのよ。ボーっとしてないで早く座りなさい。始めるわよ」


央吾の決心はまだ揺らいでいない。


「どこにいたの?」


「?どこって、チロを外に出してたのよ」


「そ、そう…」


あんなに決死の思いで布団を捲り上げたのに、何だよこの展開…

早くも決心は揺らいでいた。

と言うか、状況を把握出来ずにいた。


玄関を開け、外に出る音は聞こえなかった。俺が振り向いた時には母は外にいた事になる…。

ついさっきまで俺に話しかけていたのは…、…、誰…?


全ての話を聞くと決心した瞬間に寝たのか…?

それはありえない…。と思う…。


さっきまで確実に真っ暗だった…。夜だった…、気がする…。


状況把握出来ないまま、いつもの様にゴンギョウを終え朝食を食べていた。


「高校でも野球やるんでしょ?」


「え?あ、うん。そのつもり」


央吾は最寄りの県立高校へ進学する事が決まっていた。

家から徒歩10分の所にある普通の高校だ。

学力も普通。野球部も普通。7年前ぐらいに県大会でベスト4まで勝ち上がった事があるが、それが最高の成績で、以降は特に強い事も弱い事もない普通の成績。

もちろんヨータもスグルも一緒だ。


「じゃあ、道具一式買い替えようか」


「え?マジ?」


高揚の中に恐怖も少し混ざっていた…

(手を掛けるつもりはないから)

あの母の言葉は本人からの物か、夢か妄想か

はっきりしないが…、考えても分からない。

と言うか、断る理由もない。


「お父さんが入ってくれてた生命保険もあるから、安心して」


生命保険…まだ父の葬儀も終わったばかり…受け入れ切れていない状態で、現実を顔面に投げ込まれた様だった。


「そ、そう。…、…、…、…」


「何よ。何か言いたそうね」


…、…、…、


「言いたい事があるなら、ちゃんと言いなさい」


…、…、…、


「け、献金…は?」


恐る恐る、央吾も母に現実を投げ込んでみた。

どんな反応をするのか、昨晩の出来事が現実か夢か確かめたい気持ちもあった。


「何言ってるのよ、あなたはそんな心配しなくていいの」


「…、…、そっか…、…」


言葉が出て来ないのは、口にご飯があるからだと言わんばかりに白ご飯を書き込んだ。


「本当の事を言うとね…、…、…、…」


え?あれはやっぱり現実?昨晩の続き?

央吾の箸が止まった…。


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