第57話 case 4-寝てるかどうか
口喧嘩からエスカレートし父が何かを投げたり、物に当たり始めると喧嘩は終わる。後は父が一人で怒っているだけだからだ。
「めぐみの時もそうだ」
「ちょっとその話は…、あなた飲み過ぎよ」
あれ?今日は終わらない。しかも姉の話。
階段を上り始めた央吾だったが、再度座った。
「全部自分で決めてきやがって、西中島にうまいこと言われたんだろ?」
「何よその言い方、ちゃんと皆んなで話し合って決めた事じゃない」
「西中島と話はついてたんだろ。それ以外の結論にはならない様にな」
やっぱり、神業の事は皆んな知ってたんだな。
そりゃそうか…
「だいたい本当に神様になんかなれると思ってるのか?」
「…思ってるわよ」
母の言葉には嘘が見えた。多分神様になれるなんて思ってない。いや、絶対思ってない。
「央吾にはめぐみの神業の事は言ってないんだろ?」
「言ったわよ。でも神業が何か知らないでしょ。きっと総本山で修行してると思ってるわよ」
「は?神業が何かって聞かれたから、説明したことあるぞ…」
「…え…?…、いつ?…、何で?」
「いつって、テンショウサマが神業に入ったあの年の大晦日だよ…神業って何って聞かれたから」
「…、じゃあ央吾はめぐみが死…いや神様になったって知ってるって事?」
リビングの扉は真っ白の板でガラス部分も無いため、中の様子は全く見えないが、階段に座っている央吾には両親の目線を感じとる事が出来た。
2人ともこっち来そう、そう感じた央吾は足音を立てる事なく階段を上がり、部屋に入った。
カチャ、キー…
危ねぇ、ギリギリセーフ。
今2人は間違いなく階段の下から2階を見ている。その視線は柔らかくも鋭い冷気の様だ。
恐怖を感じた央吾は布団を頭までかぶり体を丸めた。なぜかガタガタ震えた。
今更、俺が真相を知っているかどうかなんて関係ないだろ。
父も母もそう思ってるはず。
央吾はそう自分に言い聞かせた。
トトトトトト、トトトトトト、
2人が階段を上がってきてる…
「央吾」
とても小さな声で、その声の主が父か母かも分からない。
央吾は息を止め、寝たふりをした。
しばらくの間、ジッーーーっと見られている様だ。
なぜか2人も息を潜めている。
…、
…、
起きている=全てを理解している
寝ている =何も理解していない
そう判断しようとしているのではないか…
全く理屈は通らないが央吾はそう思った。
もう息を止められないっ、体が酸素を欲している。でも今息をしてしまうと声が出る…
静かな呼吸は無理だ。
「寝てるな」
「そうね」
2人は階段を下りていった。
央吾の思った通り、両親は「央吾は何も理解していない」そう考える事にした。もうその問題について考える事を止めた。




