第55話 case 4-県支部の幹部
祖父の深夜徘徊は一時的に減ったものの、数ヶ月後には頻度は増加していた。また糞尿の撒き散らしはますます増加傾向にあった。
どれだけ掃除しても、どこかで匂う…
ここからか…?いや、こっちからか…?
いやいや、どっちからもだ…
そんな日々が続いていた、、、。
「じいちゃん、チロの散歩一緒に行く?」
央吾が祖父の部屋を覗くと、祖父が倒れていた。
慌てて駆け寄ると、祖父は笑顔だった…
寝てる…?
「じいちゃんっ、じいちゃんっ」
返事どころか、反応すらない。
「えっとぉ〜、え〜っとぉ」
パニックになる央吾。
父と母はまだ仕事から帰って来てない。
央吾1人だ…
何をしていいのか分からない、でもとにかく早く何かしなきゃ、って時は不思議なもので体が勝手に動き出す。
ただ、何をするか決まってないから本当に右に行ったり左に行ったり…右往左往とはこの事だ。
「あっ、救急車だ!」
行動がようやく決まった。黒電話まで一直線。
「じいちゃん、じいちゃん」
全く反応が無い祖父に呼びかけながら救急車に乗り込んだ。
相変わらず祖父は笑顔で無反応。
病院に着くと、親と連絡を取る様に言われ父親の職場に連絡を入れた。
医者から説明を受けた父から祖父の死を聞かされた…
何となく予想してた、前に肝硬変で倒れた時とは全く違っていた…
祖父が死んだと聞かされた時、涙が出なかった。
祖母の時は自然と涙が流れ出て来たのに…
でもその理由は分かってた。
もう夜中に居なくなったじいちゃんを探しに行く事もない…
家の中でウンコや小便の掃除をしなくてすむ…
吐きそうなのを我慢しながら、じいちゃんのお尻を拭かなくていい…
じいちゃん死んだのに、俺ホッとしてる…
「最悪で最低だな…」
それでもやっぱり安心の気持ちの方が大きかった。気持ちを棒グラフで表したら7割近くは安心だろう…
じいちゃんの最後の顔が笑顔だったのがせめてもの救いか。
しかも、ピッコロ大魔王の息子だしな。
マジュニアかハハハハ…
お通夜、葬儀と滞りなく終わった。
そう言えば西中島が現れないなぁ、弔辞も母さんが読んでたなぁ、まあどうでもいいけど。
央吾にとってはどうでもいい事であったが、
西中島が現れない理由…それは…
母親が“世界の始まり神教”の県支部の幹部になっており、この辺りの地域の担当者となっていたからだ。
高梨家からの献金額はこの時点で5千万円程。
また、母親は布教活動も積極的にしており多数の信者を入会させていた事を評価され幹部に抜てきされたのである。
その為、香典は全額母親がお布施として受け取っている。




