第49話 case 4-ピッコロ大魔王
「俺にも来てたの!?スカウト」
やっぱり俺にも来てたっ!と言わんばかりに満面の笑みを浮かべ飛び跳ねる。
「やった!オサムもいるし安心だな」
いつから行くのか、何を持って行くのか、部員は何人いるのか、どんな奴らがいるのか、強い敵が現れた時の悟空の様な気持ちだった。
ワクワクすっぞ、なるほど悟空はこんな気持ちだったんだな。
明日スグルの家に遊びに行った時、オサムにも色々相談してみよう。
央吾のワクワクは止まらない。
ナオトは来るが、アキラは来ないから大丈夫。
ちゃんと話は進んでいく。
弱肩や鈍足の話にはならない、ましてウンコの話には絶対にならない。…多分。
央吾はルンルン気分のまま、黒土で汚れたユニフォームを脱ぎながら脱衣所へ向かった。
頭を洗いながら考え事をしていた。
寮ってどんなかなぁ?やっぱりウンコ浮いてるのかなぁ…いやいや、それはどうでも良い…
いや、良くはない。良くはないが、今考えるのは止めよう。
中学生だしな、それは流石にないよな。
風呂でウンコはしねぇだろ。俺、幼稚園児の時もした事ねぇしな。
?記憶に無いだけか…母さんに聞いてみるか。
いやいや、何でウンコなんだよ。
ウンコからは離れよう。
ザァーと頭を洗い流し、浴槽につかりながら考え事…
PLだろ、やっぱり怖い先輩とかいるのかなぁ…
水飲むなっ!とか言われそう…
隠れてガブ飲みするしか無いか…
腹壊しそう…
?あれ?腹壊して…トイレに行けず練習して…
そのまま風呂入ったら…?
ウンコが出る…、…浮いてる可能性あるなぁ…
速攻で隠さないと…下痢だったら最悪だ…
お湯を全部抜くしかないか、いや1人で入ってる訳ないか…
ヤバッ!どうしよぉ…
PLからのスカウトが来ていると知った央吾は、野球の事を考えている内になぜか、ウンコの心配をしてしまう程に舞い上がっている。
PLよりもウンコに心を奪われているのか…
風呂から出ると直ぐ母に明日の予定を伝えた。
「明日の9時にスグルの家に集合だから、今日は遅くまで内職やるよ」
「いいけど、宿題は?」
内職で先手を打ったつもりが、宿題を忘れていた…
「う、うん。もちろん宿題もやるよ。あとは
算数のドリルだけだから」(漢字もあるが…)
「今日惜しかったわね。中学でもやるの?野球?」
「もちろんっ!PLだからね。せっかくだから、新しいグローブとスパイク…あと…バットも欲しいなぁ、なんてね…」
央吾は祖母が亡くなって以降、新しい道具を買ってもらっていなかった。
いつも先輩がいらなくなったグローブや、サイズアウトしたスパイクをもらっていた。
ここぞとばかりにぶっ込んでみた。
「は?PL?スカウトの話は断ったわよ」
「え…、…?」
急に視界が狭まった。
「そりゃ駄目でしょ、違う宗教だし。第一そんなお金ないわよ。私立だし、寮にも入らないといけないし、遠征費だって大変な額よ、他にも多分たくさんお金がかかるのよ。無理無理」
「いや、え?…あのPLだよ?」
「私立に行かせる、お金なんかないわよ」
父に助けを求める視線を送ったが、何の効果も無い…祖父は無表情でご飯を食べてる。
「俺行きたいけど、ダメ…?なの…?」
気持ちが沈むと同時に視線も落ちた。
母に訴えかけているが、視線が上がらない。
「駄目だって、もう断ってるんだから。そんな事より、早くご飯食べて」
「…、…、…、いらない…」
何が宗教だ、何が世界の始まり神教だ、
何がテンショウサマだ。
何も叶えてくれないどころか、
奪って行くのか…
「気色悪ぃ…」
祖父は分からないが、父と母には聞こえたはず。
2人同時にこっち向いたよ。こっち見るなって、
鬱陶しい…
目を合わす事もなく、自分の部屋に戻り着替えを済ますと、明日以降の着替えをリュックに詰め込んだ。
「早くご飯たべてよ!」
一階から桃白白いや、ピッコロ大魔王が何か言っている。
とりあえず無視。




