第50話 case 4-秘密基地
とにかく何も考えず、いや何も考える事が出来ず闇雲に色々な物を入れた。
リュックはもうパンパンだ。
ドン!ドン!ドン!ドン!
足音をわざと大きく出し階段を降りた。
何とかこの怒りを感じ取って欲しかった。
玄関でチロの首輪にリードを付けていた。
「食べないの?宿題は?内職は?」
母の口元を見たが、パクパクしてるだけで何も聞こえて来ない。
ポコペンポコペンとでも言っているのか。口から卵でも産む気か、まるで実写版のピッコロ大魔王だな。
「おい、こんな時間にどこ行くんだっ」
こっちも何か言ってるな。
シンバル?タンバリン?どっちでもいいか、まあ無視で良いでしょ。
何も告げる事なく、チロと一緒に玄関を出て行った。
衝動的に出て来た央吾は特に行く当てはない。
さてどうしたものか、さすがに友達の家には行けない。
とりあえず、チロの散歩をしながら歩き出した。
チロの気の向くままに歩いていると、久々に歩く道…思い出して来た。
最近スーファミしかやってなかったから忘れていたけど、この辺りって秘密基地のとこ。
小さな印刷会社と民家の間に大きな空き地がある。大きな道から一本北に入った車も通れない様な小さな道沿いに、雑草だらけのこの空き地をヨータ達と見つけた。
そこにはなぜか様々な形の木の板と大きな脚立がたくさん廃棄されており、一瞬にして当時の央吾達の遊び場となった。
…
…
ーー少し時を遡り、央吾低学年の頃ーー
「とりあえず、雑草どうにかしないとな」
「俺んちに草枯らしの薬剤あったわ」
「いいねぇ〜」
適当に撒いた草枯らしも、晴れの日が続いていた事もあり効果が大だった様だ。
2、3日後にはしっかり枯れていた。
木の板で壁を作り、脚立は屋根にした。
「形は家だけどさぁ、雨の日の防御力ゴミじゃね?」
「ゴミだな」
「あぁ、戦闘力5だわ」
「ラディッツを最初に見つけた地球人だな」
当たり前だ。脚立で三角の屋根は作れても、それは形だけで屋根の役割は果たさない。
「あっ!」
オサムが何かを閃いた。オサムが閃く事はだいたい吉だ。
「家にブルーシートあるから持ってくるわ」
「さすがオサム」
「一気に戦闘力アップだな」
屋根(脚立)にブルーシートを被せ、基地の中にはイスの代わりに、その辺にあった廃タイヤをたくさん置いた。小さいのから大きいのまでたくさん。
…
…
ーー時は戻り、央吾小6ーー
久々に来た秘密基地もうボロボロかと思いきや、意外と形が残ってるじゃん。
少しテンションが上がった央吾、ゆっくりとブルーシートを捲り上げ中を覗いてみた。
「マジで!?ジャンプあるじゃん!しかも最新号」
央吾たちが作った秘密基地は、もう誰かの秘密基地として使われている様だ。
週刊誌はジャンプだけでなく、チャンピオン、マガジン、サンデーもあった。
「ラジコンもあるじゃん!」
めちゃくちゃ格好良い青色のスーパーカーだ。
「タッチもある!」
漫画まで置いてある。
自分達で作った秘密基地だったが、環境が数十倍良くなっており、グレードアップし過ぎでよそよそしい。
「これ、何倍の界王拳だよ」
あまりに整い過ぎた秘密基地に弾き出される様に央吾は外に出た。
中にいたのはほんの数分。
そう思っていたが、少し暗くなってきている。
急に現実に戻された…ぐぅーっと腹が鳴った。
「何かあったっけ…」
慌ててリュックを漁り出すが、ベビースターラーメンとうまい棒しか入っていない。
「チロはこっちな」
チロにベビースターラーメン、央吾はうまい棒×2本。
腹が満たされるはずがないが、家に帰る訳がない。
秘密基地に戻った央吾は暗くなる前に夢中で楽しんだ。
チロも玄関よりかは居心地が良さそうだ。
直ぐに秘密基地の中は真っ暗で、漫画が読めなくなった。真っ暗闇ではあるが、不思議と怖くなかった。チロもいる、20m先には大きな通りがあり、車の音でうるさい程だ。
時計を持っていない為、時間が分からない。
一応、大きなタイヤをソファ代わりに寝転がってはみたものの、固いし痛い。
第一全然眠くない…




