第47話 case 4-PL
祖父が無事退院し、家に戻ってきた。
少しだけ祖父の様子がおかしい、央吾はそう思っていた。
元々そんなに賑やかに話しをする方では無かったが、退院後から一段と喋らなくなった。
表情も暗い様な気がする…
退院したとは言うものの、体調を崩す事も多くなったので書道教室も辞めてしまっていた。
「じいちゃん、チロの散歩一緒に行こうよ」
央吾はずっと部屋にいる祖父を気づかい、毎日の様に散歩に誘っていた。
「うん、行こうか」
祖父の表情はいつも暗いが、央吾が話しかけると本当に楽しそうになる。
それが央吾にとっても嬉しいことであった。
月日は流れるが、姉は帰って来ない。
やっぱりそうか…と思う気持ちもあるが、その内帰って来そうな感じもする…
姉が居ない事に何も触れずに当たり前の様に暮らしている高梨家に初めは異様さを感じていたが、少しずつこの異様さにも慣れ始めていた。
毎週水曜日の留守番の時も、朝のゴンギョウの時も、学校にいる時も、テレビを見ながら大笑いしている時も姉の事を思い出す回数は少しずつ減っていった。
これが死を受け入れると言う事なのかも…
いや、忘れてはいけない事なのかも…
央吾にとっては絶妙にアンバランスな状態が続いていく事になる。
…
…
月日は流れ、央吾(小6)
「良い試合だった。本っ当にぃ!良い試合だった!今年、山田をここまで追い込んだのはお前達だけだ。終盤の流れはこっちだったからな、もう一回あればな…勝ちたかったなぁ…勝たせてやれなくてすまん!」
野球チームの監督が、選手達に最後の言葉を贈っていた。
6年生になった央吾は泣いていた。
央吾は硬式野球のチームに入っており、今日が最後の試合になってしまった。
県大会の決勝戦。勝てば全国大会!だったのだが、6-7で惜しくも敗れてしまった。
央吾は3番ショートでチームでも中心の選手だ。
いつも一緒にいる、
スグルは1番セカンド、
オサムは4番ファースト、
ヨータは5番ピッチャー(サウスポー)
決勝戦で当たったのは、山田クラブ。
県内では常に上位の強豪チームを最後の最後まで追い詰めた。
監督の話しも終わり、央吾達はストレッチをしながら話していた。
スグルが手を挙げ得意気に喋り出す。
「昨日俺、マリカーのタイムアタックで…1分切りましたぁ〜!!」
この頃になると、ファミコンから進化したスーパーファミコンが流行っていた。略して、スーファミ。
マリカーとはマリオカートの事。
「マジッ!?」
「ドンキー?」
「いや、クッパ」
このスグルが出したタイムはとんでもない記録であった。
1分を切れば全国レベルなのだ。
あの山田クラブでも比較にならない程の化け物タイム。
「スグル凄え〜!」
スグルは一躍ヒーローになり、4、5年生までもがスグルを讃え、囲み出す始末。
さっきまで泣いてしんみりとしていた雰囲気はどこへやら、小学生の切り替えの速さはとんでもないスーパースピードである。
恐ろしく、面白い。
「お〜いっ!オサム」
「はいっ」
監督に呼ばれたオサムは、マリカー話に後ろ髪を引かれながらも監督の元へ走り出した。
そこにはオサムの両親と知らないおじさんが2人。
何の話しだろぉ、と央吾は少し気になりながらも、スグルの家に集まってマリカー大会をいつにするかで盛り上がっていたので、そっちの方が当然大事であった。
オサムが戻って来ると、すかさずヨータが切り込む。
「オサム、明日の9時にスグルんちな」
「うん」
明日の連絡だった。央吾が聞いてみた。
「何の話し?知らないおじさんいたけど」
「スカウト、PLの中等部に来てくれだって」
「PL!!!?」
PL学園とは言わずもがな、甲子園の常連校の超絶強豪校。




