第46話 case 4-桃白白
「…姉ちゃん…が…神業…?」
「そうよ」
母は一瞬躊躇った様にも見えたが、サラッと言い放った。
この時、母親は央吾が“神業”が何か理解しているとは知らない。
昨晩、央吾達とは別方向の入り口に行ったのもめぐみを“世界の始まり神教”へ引き渡すため…
姉の障害を治す為には、神業しかない…
今ならテンショウサマと一緒に神業に入れる…私ならテンショウサマに話しを通せる…
と言う西中島からの提案に乗り1,000万円の献金と共にめぐみを引き渡した。
頭の中がこんがらがっているのは、当然央吾。
何処かに答えが落ちていないか探す様に、顔をゆっくりとゆっくりと左右に動かした。
(死ぬってこと?)
声に出来なかった…
してはいけない気がした…これ以上の質問は出来なかった。
気持ちの整理が出来ない内に父と祖父が部屋に入って来た。
「酔い過ぎだよ、飲み過ぎ…」
父が呆れたように言う。
「じいちゃん、大丈夫?」
祖父は少し笑いながら、よろけていた。
「いやぁ〜、大丈夫大丈夫」
いつもと変わらず、ゴンギョウが始まった。
央吾は考えていた…
これまでの姉への優遇…宿題も内職の手伝いもしなくてよかった…、ご飯も1人だけ豪華…、新品の服…、昨日で最後だから…、もう死ぬ事が分かっていたから…、
そう言う事…?
ねえちゃんが死ぬ…?、死んだ…?神になる…?、いやいやそれは無理…、もう帰って来ない…、本当に…?
あまりに唐突の出来事に小学校2年生の央吾には思考が追いつかない。
母はブルー将軍ではなく、もっと強くもっと悪い桃白白だ。
ゴンギョウが終わるといつもの質素な朝食を食べ、寝ていなかった父、母、祖父は眠りについたが、央吾は車で寝ていたからか布団に入っても眠れないでいた。
テンショウサマの部屋からすすり泣くような声が聞こえて来た。
祖父は寝ているはず…
気になった央吾はそぉっと部屋を覗くと祖父がテンショウサマの前に座り込み、一升瓶片手に泣いていた…
やっぱり父も祖父も姉が神業に入った事は知っているはず…
半信半疑だった央吾も祖父の姿を見て、少しだけ姉の死に対し現実味が出て来た。
央吾が布団に戻ろうとした時…
「時子…時子…、…何で助けてくれなかったんだ…、何が悪かった…テンショウサマ…何を信じればいい…、…時子…」
祖母の名前を呼んでいる…
祖父は姉に対しての悲しみではなく、祖母の死に対して悲しみ、涙を流していた。
祖父は神業の事を知らない…?
その可能性もあるかと思い、央吾は布団に戻った。
「じいちゃん!じいちゃん!」
父の大きな声で目覚めると、祖母が死んだ時の事が急に脳裏をよぎった央吾は、布団から飛び出しテンショウサマの部屋に走った。
祖父が倒れていた…持っていた一升瓶は空になっている。
「今、救急車呼んだわよっ!」
1階から母の声。
祖母の時と同じ…このまま祖父も死んでしまう…そう思った央吾は必死に呼びかけた。
「じいちゃん!じいちゃん!」
救急車が到着、祖父の意識は朦朧としており呼びかけには応えない。
救急車には父と央吾が同乗した。
病院に到着後、直ぐに集中治療室へ運ばれ、何とか一命を取り止めたが、肝硬変との診断で、約1ヶ月の入院となった。
祖母の死後、祖父は毎晩の様にお酒を大量に飲んでいた。明らかに飲む量の度が超えていた。祖母が居なくなった寂しさをどうにか消そうとしていたのだろう…




