第38話 case 4-姉の正体
央吾が小学校に上がると、姉が何者か思い知らされる事となる…
姉はいつもいじめられていた。
「こっち来るんじゃねぇよ!」
「気持ちわりぃ」
「何か臭くない?」
放課後のいつも光景である。
放課後になると運動場でドッチボールや野球やサッカー、遊具を使って鬼ごっこと遊びたい盛りの小学生はなかなか家に帰らない。
それはめぐみも央吾も同じであったが、めぐみはいつも仲間に入れてもらえていなかった。
それどころか、友達に近付こうものならボールを投げられ、砂をかけられ、気持ち悪がられていた。
「ぁーあ、わぁー、あーぁ」
すぐに大きな声で泣き出す。
これもいつもの光景。
「めぐみちゃん、どうしたの?」
先生がめぐみの泣き声に気付き駆け寄ってくる頃にはもう同級生達はいない。
泣いているめぐみにはちゃんと何があったのかを先生に説明出来ない。
「誰かめぐみちゃんが泣いてる理由知らない?」
先生が周囲の児童に聞いて回るが、誰も知らない振り…
先生も本気で解決しようとしている様には見えなかった。
めぐみの味方はどこにも居なかった。
央吾を見つけると、弟だし一応聞いておこうかと言う様な顔で先生が聞いて来た。
「さあ、知らない」
先生と目を合わす事なくそう言うと、央吾は友達の元へ走って行った。
先生にも何も期待していなかった。
いつもいじめられて泣いている姉が恥ずかしく、どんどん嫌いになっていった。
めぐみと同級生の5年生の男子に声をかけられる事があった。
いつも悪意に満ちた笑顔で近づいて来る。
「おいっ、4+3は?」
「7…」
急に問題を出されたりするが、ちゃんと答える様にしている。姉と一緒にしてほしくなかったからだ。
「何だよ、お前は出来るのかよ」
「いやいや、普通出来るから」
「お前の姉ちゃんバカだな」
「5年にもなって、足し算もできねぇんだぞ」
5年生数人が1年生の央吾を囲み、姉の悪口を雨のように降らした。
子供とは残酷である。
廊下ですれ違う度に「バァカ」「アホの弟」は日常茶飯事…
なぜか小突かれ、石をぶつけられる事もしばしば…
腹が立った…イライラした…自分や周囲にではなく、姉に…居なくなって欲しいとさえ思っていた。
めぐみがいじめられている理由、それは単に分厚い眼鏡がバカみたいとか、すぐに泣くとか、見た目が気持ち悪いとか、そんな事でない。
姉が知的障害者であるからだ。
央吾以外の高梨家の大人達は世界の始まり神教に入会し信仰していれば、姉の障害すら完治すると心の底から信じているのだろう。
入会してから様々な制限が増えた。
他の神社に入ってはいけない、お祭りへの参加は当然不可。ジュース、たこ焼き、りんご飴、くじ引きに輪投げその全ての出店は神社の敷地内にあった。学校行事の遠足や写生大会ですら央吾には許されなかった。
「何で神社に入っちゃダメなの?」
央吾が母に聞いても、
「宗教が違うからよ」
この一点張り…
小学生の央吾には全く理解出来なかった…
剣道や空手を習いたいと言ってもダメだった。
一度友達に誘われ神社の敷地内で缶蹴りをして遊んだ帰り、自転車でこけて右腕を骨折した。
全く信じていなかった央吾も少しだけ信じた事もあった。
ただ、ゴンギョウを頑張っても治るのが早くなる事もない。もちろん姉の障害が軽くなっている様にも思えない。
神様は罰しか与えない…
神様なんかやっぱりいない…
高梨家はテンショウサマを500万円で購入している。




