第35話 case 4-電話してっ!
CMが始まりドラゴンボールも半分が終わった。
「姉ちゃん、郷田さんもう帰ったかなぁ?」
「もう帰ったんじゃない」
めぐみはサッとテレビにかじりついた。
あんなに怖がっていためぐみの切り替えはとんでもなく早い。
ただ、央吾にはそれが少し頼もしく感じ、CMでさえも夢中で見ている姉を見ると、さっきまでの事がウソの様に感じ安心した。
央吾も同じくテレビにかじりついた。
後半のドラゴンボールが始まり、ようやく2人はドラゴンボールの世界に再度入り込む事が出来た。
緊張から解き放たれると、喉が渇いている事に気がついた2人は自然とジャンケンを始めた。
「負けたら麦茶ね」
めぐみは必ず最初にグーを出す事を知っている央吾はパーを出し勝利。これを発見してからの1年程は姉とのジャンケンでは負けなしだ。
ジャンケンに負けためぐみは文句を言いながらも台所の近くにある冷蔵庫に麦茶を取りに行った。
ガチャガチャ、ガチャガチャ、ガチャガチャ
台所の脇にある勝手口を開けようとする音が聞こえた。
「キャー!!」
めぐみは驚きと恐怖のあまり腰を抜かしその場に座り込んでしまった。
勝手口の上半分は半透明の様になっており、そこには紺色の塊が動いている。
いつものあの作業着だ、央吾はすぐに郷田だと分かった。
「郷田さんがまた来たぁー!」
めぐみがまた叫んだ。
勝手口のドアは玄関とは違い、今にも壊れそうな程ドアノブが揺れている。
それが更に2人の恐怖心を煽った。
「ひっっ…ひっ…ひっ…」
央吾も恐怖のあまり声も出ず、涙が溢れ出してきた。
ガチャガチャ、ガチャガチャ、ガチャガチャ
さっきとは違い何も言わずに無心でドアを開けようとしているのが、紺色の塊を見るだけで分かるほど郷田の視線はドアノブに集中していた。
「央くん、ヨコばあばに電話してっ!」
ヨコばあばとは、2件隣の家に住む祖母の友達で2人にもいつも優しいおばあちゃんである。
本名は陽子であるが幼い2人からは、ようこ→ヨーコ→ヨコと変換されそう呼ばれていた。
そして今、そのヨコばあばの家に父、母、祖父母が行っている。
央吾はリビングを出た廊下にある黒電話が見えていたが、体が動かない。
「ゥウォン!ゥウォン!」
玄関からチロの鳴き声が聞こえて来た。
頼りにならない姉しかいないと思っていた央吾はチロの鳴き声が応援に聞こえた。
央吾は四つん這いで電話まで辿り着くと、ヨコばあばの家に電話をかけた。
「もしもし、どちら様ですか?」
「央吾です、お母さんいる?」
「あら、央君泣いてるの?大丈夫?お母さんにすぐに代わるわね」
ガチャガチャ、ガチャガチャ、ガチャガチャ
勝手口にはまだ郷田がいる。




