第28話 case 3-来世でも
銃を乱射していた犯人か…2人に緊張が走った。
「アビゲイルさーんっ!エヴァさーんっ!
アビゲイルさーんっ!エヴァさーんっ!」
酷く慌てた様子のカールの声であった。2人は声の正体に安心したが、体が固まってしまって動けない。
「カール!カール!拳銃を持った男がいるぞ!気を付けろ」
アビゲイルは動けなかった為、とにかく大声を出しカールへ注意した。
カールはアビゲイルの言っている意味が分からず戸惑っている様子だ。
「アビゲイルさん!早く逃げないとっ!この船は沈んでしまう!」
「この船が沈む!?本当かカール、酔っ払ってるんじゃないのか」
「本当です!氷山に衝突したらしい!だから早く逃げないと!」
2人は顔を見合わせて少し考えた…
このタイタニック号が沈むとは考えられない…でもさすがにカールはこんな嘘をつかない…
ただ動けないことを伝えてしまうとカールはこの場から離れられない。
「分かった直ぐに逃げるから、カールもすぐに逃げてくれ」
「こっちはシャッターが閉まってるから、逆側に出て!廊下を真っ直ぐ行けば外に出られる扉があるからっ!ボートで待ってるよっ!」
カールは船外へ逃げる為のボートに一度乗り込んでいたが、アビゲイルとエヴァがいない事に気付き知らせに来てくれていた。
なかなか部屋から出て来ない2人を不思議には思ったものの、シャッターが閉まっているこちら側からは何も手伝える事がないと思い、カールはその場から立ち去った。
「カールあっちに行ったな」
「ええ、行きましたね。あなた、動けますか?」
「いやぁ〜、それがさっきから動こうとしてるんだがずっと足が痺れているんだ…杖はそこにあるから…エヴァ、君だけでも先に逃げてくれ」
「いやです。と言うか無理です。あなたの手助けがないと、この揺れている船内では動けません」
2人は何とか外に出ようとしたが無理だった…
ガゴゴゴゴォーン!!
海の上だが地響きと共に轟音が鳴り、部屋が傾いた。
2人はベットと共に部屋の隅へ落ちて行った。
更にゆっくりと傾くベットの上で2人は身を寄せ合い、お互いにしがみついている。
しだいに足元には海水が迫って来ている。もうどうする事も出来ない…
「カールは間に合っただろうか?」
「きっと大丈夫ですよ。彼は足が速いから」
「そうだな。カミラには会えたがジアナにも会いたかったなぁ」
「そうですねぇ。アイラにアイビー、サディにも会いたかったですねぇ」
「アリアとシャーロットがいれば大丈夫だろ」
「しっかりしてますからねぇ」
「ボスはジョージに任せておいて良かったな」
「ええ、ジョージさんなら安心です」
2人はもう助からない事を理解していた。
すでに体の半分が冷たい海水に浸かっていた。
「最後をあなたと迎えられて良かったです」
「私もだ、来世でもきっと一緒だな。このまま逝こう…」
「はい…」
2人は凍えた体を震わせながら、抱き合いタイタニック号と共に沈んでいった…




