第20話 case 3-乗船直前
1912年4月10日タイタニック出航の日である。
サウサンプトンの港は乗船する人はもちろん、見送りや話題の豪華客船を一目見ようと集まった人達で大賑わいであった。
「いやぁ〜、これは凄い人だなぁ」
「そうですねぇ、あの大きな船に乗るんですねぇ」
「あぁ、世界最大級の豪華客船だ。全長270mもあるそうだ」
2人は腕を組み、タイタニック号を見上げていた。
「乗船の方はこちらでーす!」
係員が雑踏の中、一段と大きな声で呼び掛けている。
2人は行列の最後尾に並び、手続きを待っていた。
すると遠くの方から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「父さーん!母さーん!」
周囲がガヤガヤしている為、何処から声がしているのかが分からない2人は周りを見渡しキョロキョロしていた。
人混みをかき分け現れたのは、ロンドンに住んでいるカミラであった。
「良かったぁ〜、こんなに人が多いとは思わなかったよ、会えないかと思った」
「おぉ〜!久しぶりだなカミラ!元気にしてたか?アイラとアイビーはあの後、熱は下がったか?」
「ん?熱?…あっ、そうそう大したことなかったよ…せっかくの退職祝い、行けなくてごめんね」
「いいわよ、仕方ないわ。それより見送りに来てくれたの?ありがとう」
アビゲイルとエヴァは見送りに来てくれたカミラを見て子供の様な笑顔になっていた。
「そうそう、これを渡そうと思ってね」
カミラは持って来ていた車椅子をエヴァの足元へ差し出した。
「母さん足が悪いだろ、船の中には階段だけじゃなくて、エレベーターもあるみたいだから便利かなと思ってね」
「ありがとう、カミラ。アリアさんがくれた杖も持って来たのよ」
「アリアが?…そうそう、アリアが選んだやつだよ。使い勝手良い?」
「ええ、買い物に行く時に重宝してるわよ。アリアさんにもお礼を言っておいて、いつもありがとう」
アビゲイルもエヴァもアリアが気遣ってくれていると信じて疑っていなかった。
「また家族でいつでも来なさい。私は引退した身だ、暇を持て余してるからなハハハ」
アビゲイルはカミラの腕をパンパンと叩きながら笑っていた。
「うん、分かったよ。子供達も2人に会えるのを楽しみにしてるよ。ボスは?どうしたの?」
「さすがに連れては行けんからな、ジョージのとこに預けたよ」
「ジョージさんなら安心だね」
ジョージはカミラとジアナが小さい頃からよくミラー家へ来ていて、2人ともよく遊んでもらっていた。




