第18話 case 3-チケット
電話を切ったアビゲイルの表情を見て心配になったエヴァは問い掛けた。
「どうしたんですか?大丈夫なんですか?」
エヴァは事故でも起こしたのかと思ったのか、かなり心配した様子だった。
「ん?あぁ、カミラのとこもジアナのとこも今日来れないそうだ…」
「え?全員ですか…?」
「昼間に何度も電話してたみたいだが…私達が出掛けてたからな…」
「ボスはそれを伝えようとしてたんですね」
「カミラのとこはアイラもアイビーも熱を出してしまったそうだ…ジアナは急に仕事が入ったみたいでな…」
「そうですか…仕方ないですね…」
2人はテーブルに並べられた大量の食事を前に立ち尽くしていた…
賑やかなテーブル上とは正反対に2人は沈んだ様に俯いていた…
「そう言えば、ジアナが退職祝いにと、何やらチケットを送ってくれたそうだ」
「何でしょうね、テニスの大会のチケットかしら」
エヴァはアビゲイルの気持ちを上げようと冗談混じりに、何とか明るい声をだした。
「ハハハハ、デビスカップじゃないだろうな」
アビゲイルもエヴァがこれ以上落ち込まないように、明るく返した。
「さあ、この大量の食事をどうするかだな。ジョージにでも連絡してみるか」
「それがいいですね、まだ夕飯の準備をしていないといいですが」
数年振りにミラー家全員が集まるはずだったアビゲイルの退職祝いの夜は、ジョージ夫妻との食事会へと変わった。
数日後…
ジアナからチケットが送られて来た。
封筒を開けると、そこにはボストンからイギリスのサウサンプトン行き、ニューヨークからボストン行きの航空チケットが入っていた。
「ん?航空チケット?」
「まずはここから、サウサンプトンへ行けと言う事ですかねぇ」
2人はソファに座りチケットを不思議そうに眺めていた。
「他には何も入ってないですか?」
アビゲイルは再び封筒を手に取り、中をよく覗いてみると、封筒の奥に便箋が入っていた。
その便箋を取り出し中を開けると手紙と写真、そしてまた別のチケットが入っていた。
チケットと手紙を置き、まず写真を見た。
それはピアノの前でドレスを着たサディを真ん中にジアナとシャーロットが笑顔で写っていた。
「ピアノの発表会だったんですかねぇ」
「サディ、大きくなったなぁ」
「そうですねぇ、可愛いドレスを着て」
「ジアナもシャーロットもいい笑顔だ」
2人はこないだ会えなかったサディに見惚れ、目尻が下がりっぱなしで、暫くの間写真に釘づけになっていた。
「そうそう、手紙も入ってたな」
アビゲイルは次に手紙を手に取った。
どうやら、サディからの手紙の様だ。
『おじい様、おばあ様へ』
退職のお祝いに行けなくてごめんね、
久しぶりに会えるのを楽しみにしてたのに、
お父さんの仕事はいつも急に決まるの…
参観日も動物園も、私の誕生日パーティーの
時もそう。
お母さんからは「仕事を頑張ってくれてるん
だから、我慢しなさい」って言われるけど、
今度会ったら、お父さんを叱って下さい。
私は7歳になりました。
勉強も頑張ってるけど、今はピアノの方が
楽しいです。
2月にあった発表会で金賞を取る事が
出来たので、その時の写真を同封します。
チケットは今話題のサウサンプトンから
ニューヨークまでの船旅チケットです。
2人で優雅に楽しんでね。
ニューヨークの港で待ってます。 サディ
手紙を読み終えた2人は、目を合わせ微笑みあった。




