第152話 case 5-ジョナサン・ジョーンズと言う男
ジョナサンは音楽が好きだった。
小さい頃から、歌をうたい家族に披露していた。
皆んな喜んでくれる。特に祖父母はよく褒めてくれた。
12歳の誕生日に父がギターを買ってくれた。
本当はアコースティックギターが欲しかったが、父が買って来たのはエレキギター。
それでも嬉しかった。
テレビ越しでしか見たことがなかったギター。
思っていたよりも4倍…いや5倍は重かった。
重い分、本物感を実感できた。その日は本当に抱きながら寝た。
もっと角張っているのかと、もっと弦は細いのかと。ちょっとギザギザした感触は、それだけでなぜか少し大人になった様な気がした。
翌年の誕生日…父と母を同時に亡くした。
ドラッグ中毒の男が運転する猛スピードの車が対向車線を暴走。両親の乗っている車と正面衝突。
車が半分になる程の衝撃を受け大破。
両親は即死…しかし、ドラッグ中毒の男は奇跡的に無傷。
そんな理不尽をジョナサンは12歳の時に背負い込んだ。
後部座席にあったのは、両親からの誕生日プレゼントと一通の手紙。
「ハッピーバースデー!君の才能に愛を込めて。生まれて来てくれてありがとう!」
いつも言葉数の少ない両親らしい、短い手紙。
単純な言葉には全てが込められている様だった。ジョナサンには両親の大きな愛を感じられた。
誕生日ケーキを食べながら受け取るはずだったプレゼント。
それは真っ白のギターだった…。
悲しかった…。突然の出来事に理解が追いつかず、葬式では涙は出なかった。
数日後、学校での休み時間、急に涙が溢れ出す。
理解していなかっただけで、心は疲弊していた…限界を迎え涙となって溢れ出た。
それでも寂しくはなかった。
優しい祖父母、気さくな友人もたくさんいた。
両親の形見となった白いギター。
練習に練習を重ね、高校の学園祭では友人たちとバンドを組み、洒落っ洒落のスーツを身にまとい当時大流行していたビートルズを演奏。
学校中は沸きに沸いた。ジョナサンたちが沸きに沸かせた。
学校中のエネルギー全てを浴びた気がした。背筋の鳥肌がおさまらない。
「おいっ、おいおいおいっ!俺たち売れちゃうって!!」
「だなぁ!!」
「「「アハハ、ハッハッハッ!!」」」
演奏を終えたジョナサンたちは、控え室に戻り興奮を抑えきれない。
モテた。
メンバー全員がモテた。
そして、勘違いした…
大学生となったバンドメンバー。おっかけのファンもいた。順風満帆に思えた。
何となく「その内デビューするんだろう」ぐらいに思ってた。
プロの世界は当然そんなに甘くない。
バンドメンバーは一人、また一人と脱退。
最終的にはジョナサン一人となった。
ソロ活動をしつつ、バイト、そして時々来る作曲依頼。
食べていけない程ではないが、喜べる程ではない…。
この日も教会でいつもの様に祈るジョナサン。
ある女性が見に入る。
ブラウンの髪は肩の上で綺麗に内側へカールし、淡く甘いオレンジの雰囲気に包まれた女性。
しかしその女性は、あの日のジョナサンの様に疲弊している様子だ。
しかも自分では気付いていない…直感的にそう感じた。
思わず声を掛けてしまった。
はっきり言って、ジョナサンは男前だ。




