第141話 case 5-1965年7月
ここはケンブリッジのとあるカフェ。
天候にも恵まれ、空を見上げれば雲ひとつない晴天。それは2人のこれからを占っているかの様だった。
スティーヴンとジェーンは近くの教会で挙式を終え、出席者よりも少し遅れて貸し切りにしてある披露宴会場のカフェへ登場した。
「スティーヴン、ジェーンおめでとう!!」
「「「おめでとうぉ〜!!!」」」
純白のAラインワンピースのウェディングドレス。少しカジュアルではあるが綺麗なブラウンの髪にはよく似合っていた。
披露宴会場のカフェにはさっきまで教会にいた人数の倍程の多くの友人が集まっていた。
スティーヴンもジェーンも友人が多く、2人の到着を待ち構えていた。
「待ちくたびれたぞぉ、早くシャンパン開けようぜ」
ボート部の中でもムードメーカーのピーターだ。
「ごめんごめん、お待たせ。早速乾杯しよう」
ジェーンが押す車椅子に座ったスティーヴンが乾杯を促すと、待ってましたと言わんばかりに一斉にシャンパンを開け出した。
この頃になるとスティーヴンはALSが進行し歩行が困難になっていた。
が、そんな難病を周囲には感じさせないほどの笑顔っぷりだ。
「はいはい、お2人さんは真ん中へいったいった」
ピーターに促され2人は和の中心へ。そしてピーターからシャンパングラスを受け取ると、ジェーンはスティーヴンと目線の高さを合わせる様にしゃがみ込んだ。
満面の笑みで見つめ合った後、軽くキスをすると、
「「「フォー!」」」「「「イェーイ!」」」
「「「キャー!」」」「「「ヒュー!」」」
茶化す様な祝福の大歓声が上がる。
「今日は皆んな来てくれてありがとうぉ〜!乾っぱぁ〜いっ!」
スティーヴンの音頭で賑やかな披露宴が開始された。
「ジェーン、おめでとう!次は私たちが続くからね」
ジェーンの友人のマリアはオリバーの手を引きながら、幸せのお裾分けを貰いに来た様だ。
「マリア、ありがとう。あなたたちの結婚式も楽しみにしてるわよ」
「ハハハ、俺たちはまだ先の話かなハハ。また今度スティーヴンと一緒にアイスホッケーの試合見に来てよ」
アイスホッケー選手とは思えないほど細いが、紺色の細身スーツと淡いピンクのシャツがとても似合う。
そのオリバーへマリアはボディに数発パンチをしながら、
「まだ先なの?」
おちゃらけた険しい表情で何度もボディパンチしている。
「「ハハハ、アハハハハ」」
スティーヴンとジェーンはそんな楽しそうな2人を見て笑っていた。
「スティーヴン、たまにはボート部にも顔を出せよ〜」
「あぁそうだな、最近はジェーンに夢中でボート部のこと忘れてたよハハハ」
「何だよ、のろけかよっ、このヤロー、ハハハ」
ピーターは笑いながらもスティーヴンの二の腕を叩き続けた。
この日、大勢の友人が2人を祝い、挙式・披露宴を楽しみ、晴天の空の下祝福の雨を降らせた。
しかし、招待を受けていたにも関わらずアーサーの姿はなかった。




