第140話 case 5-完成したSOD酵素スムージー
つい先日の研究会で誰かがブラックホールと呼び出した、なんて話は棚にしっかり仕舞い込み、ジェーンは手際良く買って来た食材とアーサーが持って来ていた食材の皮を剥き準備を整えた。
「さすがにアーサーさんが持って来たものだけじゃ臭いがキツ過ぎるから、これを混ぜてみようと思って。まあ実験的なものだから、美味しい保証はないけどハハ」
早速ジェーンはミキサーに入れスイッチをオンにした。
「何を入れたの?」
スティーヴンは興味津々の表情でジェーンに聞いたが、アーサーは無表情で無言だ。
「りんごと豆乳とはちみつよ」
ちょっと得意気にジェーンは言った。
「それだけで、あの臭いが消えるかなぁ」
不安気なスティーヴンに対しジェーンは、
「その保証はないよ、多少和らぐとは思うけど…あとは味見しながら分量の調整ね」
「味見は誰がするの…かな…?」
「スティーヴン、あなたに決まってるでしょハハ」
「や、やっぱり…?ハハ…、ハハ…」
苦笑いのスティーヴン。
「まずは第一弾できたわよ、はい、スティーヴン」
「う、う〜ん…」
スティーヴンは恐る恐る一口飲んでみた。
「ん?ん〜…」
「どう?」
スティーヴンの顔を覗き込むジェーン。
「全然マシ…だけど、美味しくはない…臭みもちゃんと残ってるよ…でも凄いよ、飲み物の域には達してる」
「オッケー!オッケー!じゃあはちみつと豆乳の分量増やしてみるね」
何度かの分量調整を行い遂に完成した。
「最後にこれね」
ジェーンはそう言いながら氷も一緒にミキサーにかけた。
「確かに、冷たい方が良いよね。今までのは生ぬるさが、気持ち悪さにも繋がっていたかも…」
苦そうな、険しい顔でスティーヴンは言う。
「そうそう、それもあるんだけど、冷たくした方が味を感じにくくしてくれるの」
「へぇ〜、そうなんだ」
完成した最後の一杯をスティーヴンは飲んだ。
「うん!美味しいよ!青臭さは全く感じないっ」
「良かったぁ〜!!もう一杯作るね」
「過剰摂取は良くない」
久々に喋ったアーサー、咄嗟に2人は顔を向ける。
「早く言えよ、アーサー。もうコップで何杯も飲んだじゃないか」
「あぁ、すまない…。あと、スーパーオキシド・ジスムターゼ酵素は収穫後から徐々に減少する。特に野菜は劣化が早い、なるだけ新鮮な物を選ぶと良い。保存する場合は密閉すれば酸化防止に効果的だ」
アーサーは常に静かに一定のトーンで喋る。
「わ、分かったわ。アーサーさん色々調べてくれてありがとう」
ジェーンが礼を言うと、スティーヴンはニヤニヤしながらスーパーオキシド・ジスムターゼ酵素スムージーの最後の一杯をアーサーに差し出した。一瞬躊躇した様にも見えたが、無言で一気に飲み干した。
「ん、美味しいな。ジェーン、君は凄いよ」
手に持った空のコップを見ながらアーサーはジェーンを讃えた。
「だろ?吐瀉物の様だった物がこんなに美味しくなるんだなハハハ」
翌日からスティーヴンは大学院へ戻り、研究を再開した。
実は大学院での研究もサボりがちであったが、残された時間を役に立つことに注ぎたいと考えるようになった。
1963年に余命2年の宣告を受けるが医者の見立てとは裏腹に病気の進行は遅く、2018年まで長生きする事となる。
そして、1965年7月にジェーンと結婚する。




