第137話 case 5-吐瀉物…?…、ジ…ジムス?
キンコーン…、
呼び出しのチャイムが鳴ると2人同時に玄関に目を向けた。
「スティーヴン、私、ジェーンよ」
扉の向こうからジェーンの明るい声が聞こえて来た。
するとスティーヴンは、
「な?何回もチャイムだけ鳴らさないだろハハ」
スティーヴンは30秒毎に11回鳴らしたアーサーに向かって笑っている。
「確かに…、だが恋人のジェーンと私では立場が違うだろ」
「いやいや、立場とか関係ないだろハハ。きっとボート部のやつらでもそうしてるよ」
「そうなのか、じゃあ次からはそうしよう」
キンコーン…、
「スティーヴン!?大丈夫なの!?」
返事をしないスティーヴンを心配してかジェーンは少し焦った様子だ。
「ごめんごめん!カギ開いてるから入ってきて」
部屋に入って来たジェーンは驚いた。
あんなに塞ぎ込んでいたスティーヴンが部屋に人を招き入れている。恋人のジェーンですら拒んでいたはずなのに…
しかも談笑している。
その相手は、あの天才無愛想アーサー。
ジェーンは軽くジェラシーを感じたものの、久々のスティーヴンの笑顔を見て一安心した。
安心して気が緩んだからか、ただならない異臭に気が付いた。
「何か、凄い臭い…臭くない?」
テーブルの上に目をやると緑色のドロドロした物…
「スティーヴン!大丈夫なのっ?吐いたのっ?」
スティーヴンとアーサーは目を見合わせた。
「アッハッハッハ、ハハハハ」
スティーヴンだけが大声で笑い出した。スケートの日以来に見るそんな姿にジェーンは心配と嬉しさが入り混じり困惑していた。
「吐瀉物ではない」
アーサーは冷静に静かに言うが、動揺からか瞬きはしていない。
コップに注がれたスーパーオキシド・ジスムターゼ酵素の塊を睨みつけている様にも見える。
「え?じゃあ、これは何?」
ジェーンは素早く視線を動かし2人の顔を交互に見た。
「スーパーオキシド・ジスムターゼ酵素を多く含んだ野菜や果物をミキサーにかけた物だ」
「スーパー?…ジ、ジムス?」
一回では絶対に聞き取れないこの名称。当然ジェーンは聞き返した。
「スーパーオキシド・ジスムターゼだ」
アーサーは再度事務的に答える。
「いや、だから…それは何?」
ジェーンはスティーヴンに顔を向けて聞いた。
「スーパーオキシド・ジスムターゼは、僕の病気の進行を遅らせてくれるかもしれない酵素なんだって。そしてそのコップの中身が、スーパーオキシド・ジスムターゼの塊と言うわけなんだが…」
「ほんとっ!?凄いっ!」
「データとしては20%だ…効果があるかどうかも分からない…が、ゼロではない」
アーサーは効果は絶対的ではないと言う事を、念を押し説明した。
一気に上がったジェーンのテンションは一段階下がり、喜びの表情からスンとした目に変化した。




