第134話 case 5-淡々と
椅子に座るとアーサーは、特に前置きもなく淡々と話し始めた。
「筋萎縮性側索硬化症は神経の老化、若しくは体内で発生した活性酸素によって組織にダメージがおよぶ、いわゆる酸化ストレスが関係していると言われているが、まだはっきりとした原因は判明していないみたいだ。まあ君の場合は神経の老化ではなく、酸化ストレスの方だろう」
俯いていたスティーヴンは目線をあげアーサーを見た。しっかりと目が合ったがアーサーは特に表情を変えず話し続ける。
「これまでの研究で分かっている事、それは患者の約20%にスーパーオキシド・ジスムターゼの遺伝子異常が見つかっていると言う事だ。本来なら活性酸素であるスーパーオキシドを消去してくれるはずの酵素なんだが…その役目をなぜか果たさないみたいだ…、ただ結局のところスーパーオキシド・ジスムターゼの遺伝子異常がALSを発症させているメカニズムはまだ十分には解明されていないらしい」
スティーヴンはぽかんとした表情だ。
「お、お、お、おいおいおい…ALSの事知ってるのか?」
状況が理解できないまま、スティーヴンは質問した。
「あぁ、ジェーンから聞いたよ。とりあえ「いやいや、そうじゃなくて病気に対する知識の事だよ」
話を続けようとするアーサーの言葉に食い込むようにツッコミを入れた。
「いや、全く知らなかった。聞いた事もなかったが」
「じゃ、じゃあ何でそんなに詳しいんだよ」
「調べたんだ。とりあえ「僕のためにかっ??」
再度、スティーヴンはアーサーの言葉に食い込む様にツッコんだ。
「ん?あぁ、そうだ」
今度は逆にアーサーがぽかんとした顔だ。
その顔を見たスティーヴンは笑いが止まらなくなった。
「アハハ、ハハハハハ、ハッハッハッ」
「何かおかしいか?」
アーサーは中指でメガネの位置を直しながら聞き返した。
「ごめんごめん、まさか君が心配してくれているとは」
「まあ、唯一と言っていい友人だからな」
アーサーには友人が居なかった。もちろん、率先して作ろうともしていなかったが。
「普通は調べないのか?」
アーサーの表情は相変わらず変化無しだが、スティーヴンにとってはそれが心地良かった。
「調べてはみても、そこまで理解しようとはしないかもねハハ」
再度、アーサーは淡々と話しを続ける。
「…そうか…、とりあえず、難病中の難病だ。治せる薬も無い。だが調べる限り酸化ストレスを抑える事が大事だと思うんだ。まあ遺伝子異常が見つかっているとは言え20%だ、データとしては信用度は低いんだが…、ただ何もしないよりかは良いだろうと思ってな。活性酸素を消去してくれるスーパーオキシド・ジスムターゼを多く含む食品がこれだ」
アーサーは袋から多くの食品を取り出し、テーブルの上に起き始めた。




