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人間体験  作者: hi07


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134/170

第133話 case 5-20回は借金の取り立て

ALSとは筋肉が徐々に弱っていく病気で、その原因はまだはっきりとは判明しておらず、難病中の難病である。その一方で、進行しても視力や聴力、内臓機能、体の感覚など他の機能に異常をきたすことはない。

治療方法は確立されておらず、進行を遅らせる可能性のある薬を投与するのみで、治す薬は無い。故に完治する事は無い。


余命宣告以降スティーヴンは学校に来なくなった。

21歳で余命2年…、当然と言えば当然か。


勉強も恋愛もこれからだった。




キンコーン…、…、…、



ここはスティーヴンの部屋。


キンコーン…、…、…、



オックスフォード出身のスティーヴンはケンブリッジで一人暮らしをしていた。


キンコーン…、…、…、



呼び出しのチャイムが正確な時を刻み鳴っている。


キンコーン…、…、…、



普段なら急かされる様に聞こえるチャイムの音だが、なぜか焦る気持ちにはならない。


キンコーン…、…、…、



むしろその一定のリズムは心地良いとすら思う。


キンコーン…、…、…、



呼び出しの主からは余裕が見られ悪意などは全く感じられない。


キンコーン…、…、…、



ジェーンか?とも思ったが、学校に行く前に顔を見に来たばかり。


キンコーン…、…、…、



ボート部の友人たちなら、もう諦めるかドアを叩きながら名前を呼んでいるだろう。


キンコーン…、…、…、



ジェーン以外とは誰とも会いたくない。


キンコーン…、…、…、



そう思いながらもスティーヴンは無意識のうちに玄関まで来ていた。


キンコーン…、…、…、



ドアを開けると無表情のアーサー。


「やっぱり君か」


険しくも見えるそのスティーヴンの顔は、アーサーを待っていた様にも見える。


「居るじゃないか」


無表情のまま真っ直ぐにスティーヴンの目を見て話すアーサー。


「居るじゃないか、じゃないよ。チャイム何回鳴らすんだよ」


「11回だ」


「数えてたのかよハハ、しかもキッチリ30秒ごとに」


「あぁ、立て続けに鳴らすのは失礼かと思ってな」


「ハハ、どんな気遣いだよ…11回も鳴らしといてハハ…」


「ん?11回は多かったか?20回で出て来なかったら帰ろうと思ってたんだが…すまなかった」


久々に笑ったスティーヴン。心の底からでは無かったが、いつも通り過ぎるアーサーに安心した。


「アハハ、20回って。借金の取り立てかよ」


「…?借金があるのか?」


この手の例えツッコミには非常に鈍感なアーサー。その表情はこの時、無表情から驚きの表情に変化した。


「いやいや、例え話だよ。借金なんかないよ、で?何の用?」


「少し、話を聞いてもらえるか?」


スティーヴンはその質問への返答に躊躇した。

今は人と関わりたくない、楽しく話せる気もしない、当然勉強の話なんかもしたくない、ましてや家に入れるなんてとんでもない…。

ジェーンとですら、玄関先で少し言葉を交わすだけ…。


目を逸らしたスティーヴンだったが、気付けばアーサーとテーブルを挟み向かい合って座っていた。


アーサーは学校に来ない友人を励ましに来たんだ、と言う自己満足や冷やかしの横柄な表情は一切なく、笑えるほどいつもと同じだ。



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