第131話 case 5-診断結果
ここはイギリスのとある病院。
スティーヴンとジェーンが椅子に肩を並べ静かに座っていた。診断結果が出るのを待っているのだ。
「大丈夫よ、きっと。勉強し過ぎで疲れてたのよ」
「…、…、…」
ジェーンは軽いトーンで声をかけるが、スティーヴンは神妙な面持ちだ。
昨日の出来事、、、
スティーヴンとジェーンが付き合い出して数ヶ月。
天才の花が開き出したスティーヴンは勉強が楽しくて仕方なかった。
アーサーと共に図書館に引き篭もるスティーヴン。
あまりの運動不足っぷりを見兼ね久々に体でも動かそうと、ジェーンがスケートデートにスティーヴンを誘い出した。
運動はまるっきりダメかと思いきや、これがなかなかの運動神経。
「久々のスケート、気持ちいいなぁ」
何をしている時もスティーヴンは楽しそうだ。
軽く身をこなし混雑したスケートリンクを縦横無尽に滑っている。
「10年振りってウソでしょ!?何でそんなに滑れるのよぉ〜」
勉強ではなかなか勝てないジェーン。スケートは教える側に回れると思っていた。
「これも数学と物理学だよ。自分の体重からブレードと氷との摩擦を計算して、重心移動する距離を割り出せば良いんだよ」
「…、…、え…?、ウ…ウソでしょ?」
ジェーンは驚きのあまり交互に動かしていた足が止まり、両手を膝についた。
スティーヴンに向かって加速していた無邪気さが、感嘆に変化し減速していた。
「そんな計算を…、一歩一歩?」
「ハハハ、ウソだよっ、ウソ!さすがにそれは無いよぉアハハ」
スティーヴンは飾り気がなく子供の様に笑う。
そんな笑顔を見せられると、ジェーンは怒ることはできなかった。
「スティーヴン、あなたなら有り得ると思った私がバカだったわハハ」
ジェーンはそう言いながら両手を大きく広げたまま、スティーヴンの方へ滑って行った。
スティーヴンはしっかりとジェーンを抱き止めると、そのままクルックルッと2回転した。
「「ワァーーー、アハハッ、ハハハッ」」
2人は幸せだった。まるで自分たちを中心に地球が自転している様に感じた。
手を繋いで滑っていると、スティーヴンが珍しく尻もちをついた。ジェーンもその手に引っ張られ同時に尻もちをついた。
「アハハ、ハッハッハッ」
転んでも楽しそうなジェーン。
それに対して不穏な表情のスティーヴン。
「どうしたの?一回転んだぐらいで気分下げないでよハハ」
ジェーンは立ち上がり手を差し出した。
「ごめんごめん、急に足に力が入らなくなって」
それ以降スティーヴンはスケートリンクで立ち上がる事はできなかった…。
「足が…足が変なんだ…」
リンク上では立ち上がれなかったものの、陸に上がれば何とか歩く事はできた。
「あした、病院にでも行ってみる?」
「そ、そうだね…急に動き過ぎたかな…ハハ」
「そうよっ、はしゃぎ過ぎたのよ」
そして、翌日ジェーンはスティーヴンに付き添い病院へ…
医者から告げられた診断結果は…
「筋萎縮性側索硬化症。ALSと呼ばれる病気です」
医者は深刻そうな表情だ。
「えっと…どんな病気ですか?」
聞き慣れない病名にジェーンは直ぐに聞き返した。
「体の筋肉が痩せていき少しずつ動かなくなっていく病気です…」
「筋肉が…?」
…、…、…、
…、…、…、
…、…、…、
「はい…、徐々に動かなくなります…。非常に言い難いですが…、…、…、余命2年です」




