第129話 case 5-二人の天才
スティーヴン・ホーキング、言わずと知れた物理学者だ。彼が天才なのは言わずもがな。
ただ、世間から注目を浴びるのはもう少し先の話である。
しかし、その超天才であってもアインシュタインの一般相対性理論は難解であった。
数学の知識が足りていない事に気が付いたスティーヴン。そんな時、入り浸っていた図書館でアーサー・スミスと出会う。
アーサーは物理学だけでなく数学にも非常に長けており、スティーヴンはアーサーから数学を教えてもらった。
スティーヴン曰く「アーサーは天才」だそうだ。
スティーヴンから「食事禁止」の指摘を受けたアーサーはランチにはまだ早い時間であった為少し迷ったが、誘いに乗り席を立った。
図書館から出ると、ベンチに座りランチタイムが始まった。スティーヴンもサンドウィッチとコーヒーを買って来た様だ。
ランチを楽しみながら2人の会話は弾む。
「ん?特殊相対性理論はまだなのか?」
驚いた様子のアーサー。
「あぁ、そうだよ。一般相対性理論を理解すれば特殊相対性理論も自ずと理解できるだろ?」
アーサーは遠くに目をやり少し考える。
「それで理解できるなら良いが、難易度の低い特殊相対性理論から入った方が、一般相対性理論の概念は理解し易くなる」
「そうなの?いきなり難易度上げ過ぎてたのかぁハハハ」
楽しそうにうな垂れるスティーヴン。
「そう言う事だ」
「教えてくれよ、特殊相対性理論」
素っ気なく返答するアーサーに対し、スティーヴンは素直に教えを乞うた。
アーサーは眉間にシワを寄せ、明らかに面倒臭そうな顔をした。
「ハハハ、意外と分かり易い表情するんだな」
アーサーはもともとスティーヴンの方は向いていなかったが、更に遠くへ目線を外し顔を背けた。
「特殊相対性理論の基本原理は2つ。光速度不変の原理と特殊相対性原理だ」
アーサーは顔を背けたまま、説明を開始した。
「光速って30万km/sだったよな?」
「正確には、299792.458km/sだ」
スティーヴンの質問に対し、アーサーは即座に目線を合わせ訂正した。
「…、ハ…、ハハ…」
「実際の論文では三角関数等を用いて説明しているが、三平方の定理だけでも十分に理解ができる」
「へぇ〜、そうなの?光速度不変って事は誰から見ても同じ速度って事だよな?感覚的には理解し難いな」
「観測者は静止しているか、等速直線運動のどちらかだ」
「等速曲線運動は?」
「曲線には加速度があるからダメだ」
「加速、減速がダメって事か…まあ観測者の速度が変わってたらそりゃダメか」
「そう言う事だ」
こんな調子でアーサーは特殊相対性理論を説明した。すると、15分程の説明でスティーヴンは動く物の時間の遅れや空間の縮みを理解した。
サンドウィッチを食べながらである。




