第120話 case 4-発見③
間違いない。間違えるはずもない。
テンショウサマ…いや、テンショウ。
(姉と同じ日に、神業入りしたんじゃないのか…?)
目的地を告げらた央吾は、
「あ…、は…、は、はい…」
何とか返事をすると、車を発車させ目的地へと向かい出した。
いつもは沈黙が良い。時々フレンドリーに話しかけて来る客は嫌いだった。
しばらくの沈黙が続いていた。なぜか沈黙が不気味だった…何かが起こりそうな予感がした。
…、…、…、
…、…、…、
プルルルルルッ、プルルルルルッ
テンショウの電話が鳴った。
「…はいはい」
面倒臭そうに電話に出るテンショウ。
「あぁ…、高梨のババアの件か…、もうええやろ…、ようやく裁判落ち着いたとこやぞ…、それは西中島にでもやらせとけや…、あぁ…、それはそうと、次の神業候補見つけたかぁ?…、…、
ハッハッハッまあそこはお前に任せるわ…、…、
もうすぐ家に着くとこや…、おぉ、ほなまた明日」
タクシーの車内とは不思議な空間である。
あたかも我が家の様に、そこには運転手が居ないかの様に何でも喋ってしまう。
央吾は生きるために食べ、食べ物を買うために働いている。目的のない生きた死体だ…。生きている事に意味なんか無いと思っていた…。が、目の前にテンショウが現れた。
顔を見て9割程度であった自信が、会話を聞いて確信へと変わった。
母親の事が会話に出て来ていたが、それはどうでも良かった。ただ、神業入りしていたと思っていたテンショウが生きていた。
痛みを感じなくなっていた央吾の心の生傷が急に痛み出した。
痛みに耐えながら運転していた。脂汗が額では収まりきらず首元へ流れ出した頃、テンショウの家に着いた。
支払いをするテンショウの腕には高級時計、いかにも高そうな指輪やブレスレットを着けてある。
忘れていた嫌悪感や憎悪の感情が心の奥底から溢れ出す…
支払いを済ませ車を降りるテンショウに飛びかかろうとしたが、辞めた。
冷静な央吾もそこにいたのである。
(今じゃない…)
直ぐに淡路島のソウホンザンへ車を出発させた。
ソウホンザンに着くとテンショウサマを祀っている本堂へ向かった。
年末には幾度となく見て来たはずのミイラ化したテンショウサマ…のはずだった。
そのミイラ化したテンショウサマを初めてちゃんと見た。
それは、どの角度から見ても姉のめぐみである。
央吾は生きる意味を見つけてしまった。




