第119話 case 4-発見②
生きていれば、腹が減る、腹が減るから食べる。
食べ物も当然ただではない。お金が必要…だから働く。央吾は食べるためだけに働き、生きていた。
何のために生きているか?そんな事考えるのも虚しい。
残念ながら央吾が生きている事に意味は無かった。
央吾の心の生傷はナイフで何度も何度も刻まれミンチ肉の様になっていた。修復の余地は無く、放置していた…もう痛みすら感じない…
ある日、中華料理屋の客が央吾の顔を見てコソコソ話しをしている。
全く気付いていない央吾はその後、自転車で配達に向かった。
配達から戻って来ると、店の奥で警察官が店長と話していた。
「高梨央吾と言う子がこちらの店で働いてませんか?」
「ええ、働いてますけど…、あ、ちょうど今戻ってきましたわ」
店長が央吾に気付き、警察官へその事を告げると
警察官が央吾に問い掛けた。
「きみ、高梨央吾君か?」
央吾は逃げた。配達用の自転車で逃げた。
余裕で逃げ切れた。警察も必死で探していない様に感じた。
隙を見て店の裏口から入り、荷物を取る事も出来た。
その後、交通整理や工事現場など色々な職場を転々とし、バレそうになれば逃げた。特に罪悪感は無かった。人との付き合いを極端に嫌ったため、仲が良い人間もいなかった。名前も変え、中古車販売の店で働いている時に保険証も作ってもらった。
山田ジンと言う偽名で運転免許も取得する事が出来た。
飲食店での接客や職場仲間など、人付き合いをしたくなかった央吾はタクシー運転手となった。
職場に戻らず、ずっと外にいれば誰とも話さなくていい。接客といっても必要最低限の会話だけで良い。
ここ数年の仕事や自転車生活が役に立ち、道には詳しかった。
どうでもいいが…有名人の自宅の情報は知らず知らずのうちに覚えていた。特に興味も無いので、誰に話すでもないが。
この日も大阪駅周辺で流していた。
たまたま乗ってきた若い男3人組…乗り込んで来た瞬間に気が付いた。
スグル、アキラ、ナオトだ。
(全然変わってねぇな…でも、もう関わらねぇ…関わっちゃいけねぇ…)
死への憧れすらあった央吾であったが、3人の会話を聞いて、数年振りに口角が上がった。
数年振りに聞いたはずの他愛もない会話。
昨日の事の様に思い出した。
3人を降ろした後、新大阪駅で客を待つ央吾。
1人の男が乗り込んで来た。
央吾はその男の顔を見て、思わず息をのむ。
坊主頭のギョロ目、少ししゃくれていて色黒…
何年も連続で見た男の顔だった…
テンショウサマだ…




