第118話 case 4-発見
タクシーを降りたスグルたち3人。
「さっきの運転手、なんかオーゴの声に似てなかった?」
スグルが携帯をいじりながら2人に問いかけた。
「ん〜、どうだろ。全然気にしてなかった」
「いや、全然違ぇだろ」
「さすがに、そんな偶然ないかハハ」
「それなら話しかけてくるだろ、オーゴだ佐々木さんだって言ってんだから」
「そりゃ、そうだハハハハハ」
「それより、待たせてんだろ?早く入ろうぜ」
「いや、それがあっちもまだ来てないって」
「何だよ、タクシーで来なくてもよかったじゃん」
「ハハハ、無駄金だったな」
「遅刻の罰だな、ハハハハハ」
「先入っとくか」
「だな」
スグルの耳は間違えていなかった。
3人が乗っていたタクシーの運転手、実はこれが央吾であった…。
今しがた、合コン前の男3人組を降ろしたタクシー運転手こと、高梨央吾は山田ジンと名前を変え大阪に住んでいた。
母親が逮捕されたあの日、警察署から家に帰った央吾は直ぐに支度を始めていた。
それは施設に行くためか、元々計画していたのか、それとも無意識か…
必要最小限の物とテンショウサマの中に置いてある母親のへそくりを取りカバンに詰めた。
家宅捜索の後の家の中…タンスや押し入れ、食器棚、央吾の部屋の中まで…開けた扉は全て開けっぱなし…警察にも無性に腹が立った。
そんな家だからか、妙に他人行儀に見えた。
とりあえず、何も感じたくない…
そんな思いからか頭まで布団を被り横になった。
暗闇の中、央吾の頭の中は怒り、悲しみ、苦しみ、不安、動揺、苛立ちと様々な感情が入り乱れ混沌としていた。
その中でも一番大きかった感情は…後悔である。
もしかしたら、母親に佐々木の事を話していれば、こんな事になっていなかったのかも…
自分のせいで佐々木を殺してしまった…
佐々木を殺したのは自分だ…
俺だ…、俺だ…、俺のせいだ…、
何で…?何で…?何でこんな事に…?
…、…、…、
…、…、…、
…、…、…、
…、…、…、
気付けば外はもう明るい。
とりあえずチロの遺骨はちゃんとしないと…
まずは中村動物病院へと向かった。
入り口に骨壷を置くと1分程しっかりと手を合わせた。
一度家に帰ったが、玄関に置いてあった荷物を手に取ると、何となく外に出た。
何も考えずただただ歩いた。
なぜか吸い込まれる様に駅へ…
当然、行くあてもないはずなのに、電車に乗り込んだ。
突如として睡魔に襲われ、目を覚ますとそこは大阪。
そこからは特に何をするでもなく昼間は駅に座り込み、夜は漫画喫茶で寝泊まりした。
すぐにお金も底をつき、働く場所を探すが16歳の身寄りのない央吾を雇ってくれるところは無かった。
ようやく見つけたのが住み込みで働ける中華料理屋。3畳程の休憩スペースが央吾の寝床だった。
休みも無かったが、それでも良かった。
休みがあっても仕方ない…やる事がない…やりたい事もない…言われるがまま…皿洗いに配達と何でもやった。
この頃から央吾は無表情で無愛想、誰とも話さない…笑うことも無い…笑いたいとも思わない…
呼吸しているだけの死体であった。




