第117話 case 4-不思議な空間
央吾が行方不明となり、捜索が開始されてから数年が経過した…。
有力な情報と言えば、央吾が行方不明となった当日の朝、中村動物病院の前にチロの遺骨(骨壷)が置かれていたことぐらい。
防犯カメラに写っていたのは央吾であったが、その後の足取りは掴めていない。
野球部軍団も高校卒業後、進学や就職とそれぞれバラバラとなっていた。
「大阪って都会だなぁ〜。未だに慣れねぇわ」
「俺らの地元に比べたら、そりゃ大都会だな」
「人多過ぎっ」
「ハハハ、だな」
アキラとスグルは大阪の大学に進学していた。
「にしても、ナオトのやつ遅ぇなぁ」
「また迷ってんじゃねぇ?バカだから」
そう言えばナオトも大阪の大学に進学していた。
今晩、この3人は女子3人組と飲み会である。
いわゆる、合コンである。
大阪駅の中央改札口で待ち合わせしているが、ナオトが一向に来ない。
「わりぃ、わりぃ、待たせたな」
ポケットに手を突っ込みニタニタと謝るナオト。
「待たせたなじゃねぇよ、遅ぇよ」
「悪いって思ってるやつの態度じゃねぇだろ」
「いやぁ、間違えて新大阪駅で待ってたわぁ」
「はぁ?」
呆れてものも言えないスグル。
「バカだなぁ、大阪と新大阪間違えるかよ普通」
「うっせぇなぁ、ぱっと見同じだろっ、御堂筋線乗ってたらそのまま着くもんだと…ハハハ」
「御堂筋乗ってたんなら、梅田で降りろよ」
「は?梅田?何言ってんだよ、大阪駅だろ?」
「…、…、…、もう…、いいです」
スグルもアキラも説明をやめた。
「とにかく行くぞ、遅刻だ、遅刻っ」
「歩いてどれくらい?タクシーで行こうぜっ、今日スロットで勝ったからよ」
「おっ、マジ?じゃあ、今日はナオトの奢りだな」
「いやいや、飲み代は出さねぇよ」
そんな話をしながら、とりあえずタクシーを拾い乗り込んだ。
スグルが目的地を告げると、
「分かりました」
運転手は口をほぼ開けず、小さい声でボソボソと返答して来た。
この無愛想な運転手は乱れた長髪に無精髭、顔も殆ど見えず年齢不詳だ。
そんな事は気にせず男たち3人組は今から始まる合コンにウキウキの様子。
「スグル、今日来る子ってどこで知り合ったの?」
「ん?学校」
携帯をいじりながら答えるスグル。
「俺、工業大学だから全然女子いねぇわ」
「うちは文系だけど、全然いねぇ、バカな男ばっか」
「まあナオトが入れるぐらいの学校だからな」
「何だとこのヤローっ」
スグルを挟み喧嘩が始まった。
「うるせぇよ、お前ら。コンパ中に喧嘩すんなよ、女の子が怖がるから」
「これぐらいで怖がらねぇだろ」
「だな、佐々木さんもいつも笑ってたし」
「いやいや、最初は引いてただろ」
「じゃあ慣れてもらわないとな、ハハ」
「何で喧嘩やる前提だよっ、あぁ〜オーゴがいてくれたらなぁ」
「オーゴいたら、喧嘩していいのかよ」
「1人で止めるの面倒臭ぇんだよ、オーゴがいれば笑いにもなんだろ」
「確かに、ボケもツッコミもできたしな」
「スグルが言ってたみたいに、大阪にいねぇかなぁ」
「ボケもツッコミも更に磨かれてたかもなハハ」
「案外、居酒屋とかでばったり会ったりしてな」
「ハハハハハ、心配させた分、奢ってもらわねぇとな」
「だな、ハハハハハ」
タクシーの車内とはなぜか、運転手はいないものとして、ついつい何でも話してしまう不思議な空間である。
タクシーを降りた3人は意気揚々と合コンに挑むのであった。




