第116話 case 4-央吾の行方
高梨央吾がいない。
その事に最初に気付いたのは、央吾を迎えに来た施設の担当者。
何度インターホンを鳴らしても出て来ない。
玄関の鍵はかけられておらず、玄関からも何度も声をかけた。
しかし、返事はなく人の気配すらない。
ここ数日の経緯を知っているその担当者は自殺の可能性も考え、恐る恐る家中の部屋を見て回ったが央吾の姿はどこにも無い。
直ぐに警察と学校に連絡を入れたが行方が分からない。
当然、野球部やユージローたちにも情報が入り心当たりがある場所を探したが、央吾どころか目撃情報すら無い。
警察も捜索を開始したものの、何の情報も無いままにただ闇雲に探すしかなかった。
自殺の可能性が濃厚であるが、遺体が見つかったという情報も無い。飛び降りや飛び込みならすぐに情報が入るはず。
この辺りは田舎で山も近い。
央吾の自転車は家に置いてあった事から、徒歩圏内での山を重点的に捜索が開始された。
しかし、何も見つからないまま数日が過ぎ、数週間が経った頃には捜索員に割り振られる人数も激減した。
そして何の手がかりも無いまま数ヶ月が経つと、警察は署内や交番などへのポスターの掲示によって情報提供を待つ事にした。
実質の捜索打ち切りである。
死亡した確率が高いと判断したのだろう。
更に数ヶ月が経過、、、、
「オーゴ、どこ行ったんだろぉな」
「さぁな…、…、…」
野球部1年軍団、もとい2年軍団は練習を終え、いつもの様にコンビニでだべっていた。
「…、…、生きてるよなっ?」
「ったりめぇだろっ、変なこと言うんじゃねぇよ」
ナオトの空気を読めない言葉に、コタニが声を荒げた。
友人たちの中で央吾と最後の言葉を交わしたのはコタニだった。
「もうこの辺にはいねぇのかもな」
スグルがカロリーメイトをかじりながら言う。
「じゃあ、どこにいんだよ?」
「ん〜、大阪とか?」
「何で、大阪なんだよ?」
「ん〜、勘?」
「なんだそれっ」
「スグルの勘は結構当たるからな」
「そう言やぁ、佐々木さんと大阪で住みたいとか何とか言ってたよな」
「ハハ、言ってた、言ってた」
「俺たちぐらいには行き先、言っとけよなぁ」
「だよなぁ、挨拶もしねぇでよ」
「あぁ、水臭ぇよな」
「何?その水、臭ぇの?」
「ナオトはやっぱ、バカだな」
「何だとっ、どう言う意味だよっ」
「いや、そのまんまだろっ」
またいつものナオトとアキラの喧嘩が始まった。
この2人の喧嘩は呆れるほどくだらないが、重い空気が軽くなり、少し和やかになる。
2人はそれを分かっていて喧嘩している様な気もする。
「また喧嘩してんのか?」
女子と2人で歩くユージローが声をかけて来た。
「何だよユージロー、彼女出来たのかよ?」
「ん?あぁ、そうだ。彼女の西田アキさんだ」
「?…、西田…アキ…って、オーゴに告っ「バカッ!!余計な事言うんじゃねぇよっ」
スグルがナオトの言葉をかき消しながら頭を叩いた。
「痛ってぇなぁ〜、何すんだよスグル」
ナオトはやっぱりデリカシーが無い。
「ん?アキさんが何だ?」
「いや、何でもねぇよ。お似合いだわ」
スグルが、すかさずフォローした。
野球部仲間やユージローら友人たちも、央吾の心配をしながらも徐々に普段の生活へと戻っていった。




