第115話 case 4-食事
先日、佐々木家で発生した無理心中事件。
それは無理心中ではなく殺人事件であり、その容疑者として佐々木の母親が逮捕された。
しかし、その後の捜査や佐々木の母親の供述により、この事件の首謀者が央吾の母親だと判明。
実行犯の男2人と共に逮捕された。
どうやら、“世界の始まり神教”への献金に困った佐々木の母親が相談を持ちかけたのが、央吾の母親。
睡眠薬を晩ご飯に混ぜ服用させ、既に自分の部屋で眠っていた佐々木の部屋へ父親を運び、部屋を密閉後、練炭に火を着けたのだと警察官は言う。
数ヶ月前に生命保険の内容を自殺でも支払われるよう変更していた様だった。
そして今、高梨家には家宅捜索の為に警察官がたくさんいるらしい。
色々な専門用語を交えた話を聞かされた。
その後、央吾にも事情聴取?かの様にいくつかの質問をされたが何と答えたか、央吾にはその記憶がない。
今後の学校の事、お金の事、住む場所をどうするか、施設がどうのこうの…
そんな説明を長々と話されるが、央吾の頭にはその殆どが入って来なかった。
明日、施設の人間が央吾を迎えに来るらしい。それだけは分かった。
同じ学校に通う生徒を殺害した殺人犯の息子が、そのまま高校に通えるはずもなく、転校はやむを得ない…そう判断された様だ。
央吾の心の傷は瘡蓋は全て剥がれ落ち生傷へと戻り、鋭利な刃物でエグりにエグられ、完全に修復不可能の状態となった…。
ガゴンッ!
急に目の前の机が央吾の視線を全面に遮り顔面を打ち付けた。いや、央吾の体の全ての力が抜け落ち、座ったまま机へと突っ伏したのである。
気付けば警察署内の処置室であった。
「大丈夫か?高梨…」
学年主任の豊田が声をかけて来た。
「…、…、…、…」
央吾は声も出ない程心身ともに疲弊していた。
「まず、水でも飲め…」
豊田に言われるがまま水を飲む央吾。
砂漠の砂の様に乾いていた央吾の体は久し振りに水分を補給し、みるみるうちにコップ一杯分の水を吸収した。
「みそ汁と弁当あるぞ。食べれるか?」
ここ数日受け付けなかった央吾の体は食物を欲していた。みそ汁の香りだけでヨダレが出て来た。
美味しかった。高野豆腐がこんなに美味しいとは知らなかった。揚げ物も何の抵抗も無く、体が受け付けた。
母親以外が準備した食べ物は受け付ける様だ。
何となく、本当に何となく、いつか母親も居なくなる。そんな風に考える事もあっが、佐々木というかけがえの無い存在の出現により、無意識のうちに胸の奥深くに仕舞い込んでいた。
「もう家に帰れるみたいだ。送って行くよ」
食事を終えた央吾に優しく声をかける豊田だったが、
「いえ、一人で帰ります…」
そう返答し、一言礼を言うと央吾は警察署を後にした。
翌日、央吾は行方不明となる。




