第111話 case 4-豪華な金色和風シャンデリア
佐々木には友人も多かった様で、テニス部の仲間たちや違う高校の生徒など、たくさんの友人たちが参列していた。
央吾はユージローやタケシたち野球部メンバー数名と参列した。
父親も亡くなったからか、参列者の人数は相当多かった。
人だかりでなかなか前に進めない。
遠くに見える佐々木の遺影…いつものあの笑顔。いや、央吾の前ではもっと無邪気に笑っていた。
あの変顔も、あの遠慮のない無防備な笑顔も…もう見えない…。
もう一生分の涙を流したつもりだった。
それでも涙は止まらない…。
お焼香の番が回って来た。
言いたい事はたくさん、山のようにあるはずだった…。野球やテニスの事、勉強にテスト、夏休みの予定、花火大会、これからの事、いくらでもあったのに…。
佐々木の遺影を目の前にすると何も言えなかった…、…、…。
ちゃんとお別れするのが怖かった。
手を合わせ、頭を下げただけだった…。
また涙で前が見えない…、
また泣き崩れそうになる…、
またユージローが支えてくれた。
ユージローにしがみつき、なんとか外に出た。
ベンチに座ると、もう立てる気がしない程、足に力が入らない。
皆、佐々木の突然の死への戸惑い、また央吾を気づかい喋れないでいた。
「なんか、聞いた事ねぇお経だな。どこの宗派だよ」
ナオトが空気を読まず、いや読めず喋り出した。
「んなもん、どこでもいいだろ」
スグルが静かにツッコミを入れた。
その時、今まで央吾の耳には入って来ていたはずだが、認識していなかったお経が聞こえてきた。
…、…、
…、…、
“ゴンギョウ”だ。
興味もなく憎しみすらあるそのゴンギョウ…、10年以上毎朝の様に繰り返した結果、そらで言えるほどだ。
聞き間違えるはずもない。
葬儀場の奥をよく見ると、見覚えのある装飾品。
あの豪華な金色の和風シャンデリア…
テンショウサマだ。
佐々木家もまた、高梨家と同様“世界の始まり神教”に入会していたのだ。
(佐々木さんも同じ境遇だったのか…、そう言えば家族の事は父親が元ラガーマンだったことしか知らない…、話したくなかったのかもな…、
“世界の始まり神教”の事知られたくなかったんだな…、言ってくれたら良かったのに…、…、
いや言えない…実際俺も家族の話は全くしていない…、言うのが恥ずかしかった…、そもそもあの母親の事なんて言えない…、言えるはずもない…
神教のことはスグルやヨータにすら話した事がない…、佐々木さんとは神教のことすらも分かり合える唯一の存在だったのかも…)
そう考えると、央吾の心は更に締め付けられ、物理的な痛みすら感じるようになって来た。
ふと、聞き慣れた声。
誰かが弔辞を読み始めた様だ。
「?…、…、?…、…」
母親だ…。
全く気が付かなかった。母親が居るなんて考えてもいなかった。




