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人間体験  作者: hi07


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109/138

第108話 case 4-何も言うな…

振り返り歩き出した央吾に、タケシが声をかける。


「ぉ、おい、どこ行くんだよ」




「…、…、…、佐々木さんち…、…、多分…、…家にいんだろ…、…、話聞いてくるわ…、…」


その力無い声は、意識がはっきりとしているとは思えなかった。


「俺も一緒に行くぞ、いいな?オーゴ」


ユージローは央吾の背中に話しかける。返事を聞く前にユージローは歩き出した。

央吾は一瞬立ち止まり、


「…、ぁぁ…、…」


蚊の鳴く様な小さな声で返すと、また歩き出した。


「おい、でも学校…、…どうすんだよ。正門の方にはテレビ局のやつらがいっぱいいるぞっ」


タケシは2人に言ったが、何の返事もない。



央吾とユージローはテレビ局の取材を受けなくていい様に、誰もいない東門から出て、佐々木の家へ向かう。


いつもの2台並んだ自動販売機。そこから30m程奥に行けば、佐々木の家だ。


家が見えた。が、警察官が数名、パトカーも数台止まっており、規制線が張られていた。


央吾とユージローは止まる事なくそのまま規制線の中へ入ろうとした。


「おい、さすがにヤバいだろ」


2人を止めたのはタケシだ。央吾を心配し着いて来ていた様だ。


その動きに気付いた警察官が一人近付いて来た。

坊主頭の3人組。それだけで何かを察したのか、


「君たち、野球部か?」


「…?…、え?あ、はい」


急な警察官からの問い掛けに、タケシがしどろもどろで答えた。


「ちょっと待ってろ」


そう言うと、その警察官は家の中へ入りすぐに出て来た。


「君たち、これに心当たりはないか?」


警察官が見せて来たもの、それは昨日央吾が佐々木に渡した背番号だった。


「…それ、…、俺の…っす」


央吾がそう答えると、


「娘さんの枕元に大事そうに置かれてあったんだ」


そう言いながら央吾に背番号を手渡した。

央吾はその背番号をじっと見つめた後、強く握りしめた。

少し落ち着きかけていた呼吸がまた荒くなる…


「佐々木さ、…ミオさん…、は?どこっすか」


「…、病院だよ…、三ツ島病院」


警察官は低く優しい声で教えてくれた。


「…病院行ってくる」


央吾はまたすぐに振り返り歩き出そうとしたが、ユージローが央吾の腕を掴み制止させる。

央吾の方を見る事なく、警察官をじっと見つめると、グッと目を閉じ大きく深呼吸した。



ユージローが喋り出す…、…



「…ミオさんの…、…、、、、


央吾にはユージローが何を言うのか…分かった…

(待ってくれっ、聞くなっ、聞くなっ!聞かないでくれっ!)


、、、、…ミオさんの…、…、容体は?」


央吾はゆっくりと振り返り、警察官を見た。

(やめてくれっ!言うなっ、言うなっ!何も言うなっ!)


警察官は小さくゆっくり、そして3人に分かる様に首を横に振った…

「救急車が到着した時には…、もう…、…、…、亡くなってたそうだ…」


「っ言うなぁーっっ!!あぁーっっ!!」


警察官に掴みかかろうとする央吾をユージローとタケシは必死に止めた。


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