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人間体験  作者: hi07


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106/135

第105話 case 4-別れ

別れとはいつも突然である…


早朝、央吾は尿意と共に目を覚ます。

しかめっ面で時計を見た。


「3:58 かぁ〜、…、…」


何とかもう一度寝ようとしたが膀胱がそれを許してくれなかった。

仕方なくトイレに行こうと階段を降りた時、チロが寝ている。

いつもなら足音に気付きこっちを見てくるのに…


不思議に思った央吾は玄関で寝ているチロに近付く。


2、3歩近付いただけで、その違和感の正体が判明した。


寝ているのではない、倒れている…


「チロ!、おいっ、チロ!!」


直ぐに抱きかかえるがチロにいつもの力強さはなく、もう冷たい…

いつもよりも重たさを感じる…


「チロ?…、…、チロ?」


小さく呟く様に問いかけるが…反応は無い。


「チロォーッ!!チロォーッ!!いつまで寝てんだっ!?起きろっ!!」


力なく目を瞑ったままのチロ…。


「どうしたの?そんなに大きな声出して」


母親ことフリーザが央吾の声を聞き起きて来た。


「チロが…、…、チロが…、…」


央吾の声は震えている。


「えっ!?」


母親も驚いている様子。央吾に近寄り、チロの頭を撫でる。


「あんたよりも年上の17歳だからね…人間で言うと80歳以上よ…」


「おいっ!チロっ!散歩行くぞっ!!好きだろ散歩!!」


央吾に母親の言葉は届かない。


「ゆっくり寝かせてあげなさい」

「クッキーだぞっ、ほら食べろ、口開けろっ」


央吾はチロの口を無理矢理開けてクッキーを押し込もうとする…

母親はその手を取り、


「ゆっくり寝かせてあげなさい。中村なら今から診てくれるかも」

「行こうっ!すぐ行こうっ」


中村とは近所にある動物病院。

病気には罹ったことがないチロだが、予防接種などはこの中村で受けていた。




中村に着くとすぐに診察してくれたが、チロは既に息を引き取っていた。


「老衰だね、悲しいけど、でも大往生だよ」


「わぁーーっっ!チロォーーー!あぁーーーっ!!嫌だぁーっ!チロっ!チロっ」


チロの死…


それは玄関で央吾の脳裏をかすめていたが、遠くへ遠くへ追いやっていた。

チロを抱きかかえ、中村まで走っている道中も「まだ生きている」と何度も自分に言い聞かせ、信じようとしていた…


老衰…、…、死…、…


現実をど真ん中へ投げ込まれた。

避けようが無かった…、もう遠くへ追いやることは出来なかった…


央吾は何度も何度もチロの名前を呼び、頬ずりしながら泣いた。

誰の死よりも辛かった…


央吾が生まれた時には、もうチロはいた。

毎日散歩した、郷田からも助けてくれた、野球も教えた、一緒に家出もした、嫌な先輩の話もした、高校に入ってすぐに告白されたことや、佐々木との事、母親には言って無い事もチロは全部知っている…

チロとの思い出なら無限だった。思い出の数だけ涙が出る。


紛れも無く親友、紛れも無く相棒。


その唯一無二の相棒が死んだ…

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