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人間体験  作者: hi07


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105/133

第104話 case 4-暗記カード

快挙の背番号。予備などあるはずがない、この超大切な物をコンビニに忘れるという大失態。

それを佐々木は阻止してくれた。


「良かったぁ〜、ありがとうっ、焦ったぁ〜」

「私が縫い付けても良い?」


佐々木は背番号を目の前に広げ聞いて来た。


「マジッ!?いいの?ってか裁縫もできるんだっ、凄ぇ」

「ん〜、〜、得意ではないけど…、これぐらいなら多分ハハ。央吾君のために頑張ります」

「嬉しっ、絶対ヒット打てるわぁ」

「絶対応援行くから、頑張ってね」

「もちろん、もう打てるイメージしか湧かないわぁ」

「アハハ良かった。じゃあ明日ユニフォーム持って来てね」


央吾には佐々木が勝利の女神に見えた。


「そうだ、ちょっと待ってて」


そう言うと佐々木は家に向かって走って行った。

テニス部白リュックを背負い、重いスポーツバックを持っているにも関わらず、軽ぅく走っている佐々木の姿は、陸上部かと思うほど走り方が綺麗だ。しかも速い。


直ぐに何かを持って戻って来た。

大きな高級そうな和紙を折りたたんでいる。


「夏休みに花火大会あるでしょ?これ着て一緒に行きませんか?ハハ」


その和紙に折りたたまれてあったのは紺色の浴衣であった。


「行く行くっ、絶対行く!一緒に行きます!」

「アハハ、やったぁ、良かったぁ。じゃあ約束ね」

「この浴衣めっちゃ綺麗。いいのっ?」

「うん、お父さんのだけど、着てるの見たことないから」


「どれどれ」


佐々木はそう言いながら、浴衣を央吾の肩から腰にかけて当てて見ている。


「うん、思った通りっ、似合う似合う」

「似合ってる?」

「めっちゃ似合ってるよ」

「佐々木さんも、浴衣?」

「うん、これとお揃いの紺色」

「お、お揃いの浴衣で花火大会」


央吾のニヤニヤが止まらない。


「これは無地だけど、私のは朝顔の柄が入ってるのぉ」

「佐々木さん、浴衣似合いそぉ〜」


央吾は佐々木の浴衣姿を想像すると、更にニヤニヤが止まらない。


「央吾君、変な顔になってるよハハ」

「ん…?…、ヤバッ…」


央吾は顔をパッと引き締めた。


「あぁ〜、夏休み楽しみだぁ〜」

「フフ、私もぉ〜」


「でもその前に、試合だなっ」

「うんっ、でも…、その前に期末テストがあります」

「…、…、…、そうでしたハハハ」

「期末テストの事忘れてたでしょ?」


佐々木は浴衣を自分の腕にかけると、スカートのポケットから何かを取り出した。


「これ使って、ちゃんと覚えて」

「何これ?」

「英単語の暗記カード」

「へ、へぇ〜…、…、…」

「もしかして、使った事ない?」

「は、はい…、…」


佐々木は呆れ顔だ。


「表に英単語、裏にその和訳を書いてあるから、こう、こう」


佐々木は暗記カードをペラペラとめくりながら説明した。


「おぉ〜、なるほど」

「期末テストの範囲になる所の単語だから、ちゃんと覚えてね」

「アイアイサー」


敬礼する央吾。


「今週の土曜日に図書館で単語テストね」

「えっ、えぇ〜!」

「え〜!じゃない!ビジバシいきますっ」

「はいっ、佐々木先生っ、頑張ります」


「アハハ、…、じゃあ…、また明日ね」


別れ際、佐々木はいつも悲しそうだ。

切なくも愛おしい瞬間である。


「うん、また明日」


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