第7章ー51 新メンバー
前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。
ギルドマスターに自分の決意を伝え終えたグレンは、部屋を後にし、そのまま食堂へと向かった。
グレンが階段を降りると、賑やかな声がすぐに耳に入る。
テーブルを囲み、ロゼッタ達が楽しそうに談笑していた。
グレンの姿に気づいたリンが、ぱっと顔を上げる。
「グレン!話終わった?お腹ペコペコなんだけど!」
間髪入れずにミレイアが続ける。
「早くしないとアマルダさんが餓死する」
それを聞いたアマルダが即座に否定する。
「そっ、そんなことはないぞ」
だが、その落ち着きのなさが何より雄弁だった。
グレンは苦笑しながら席に着く。
「悪い悪い、ちょっとな」
その顔を見て、エレナとアマルダは内心でほっとしていた。
先ほどまで、グレンから感じていた張り詰めたものが、綺麗に抜け落ちていたからだ。
グレンは手を叩き、場の空気を引き締める。
「よし、今日はウエストリバータウンの依頼達成の祝勝会だ!」
そしてホーゲルの方を見る。
「ホーゲルさんも遠慮せず頼んでくれ。今日は俺の奢りだ、派手にいくぜ!」
そう言うや否や、次々と料理と酒を注文していく。
「グレン、ありがとう」
ロゼッタが素直に礼を言う。
リンがにやりと笑う。
「よっ、兄貴!太っ腹!」
ミレイアも続く。
「兄貴、ご馳走になります」
無表情のまま呟くが、何処となく嬉しそうだ。
エレナは微笑みながら。
「ご馳走になるわ、兄さん。」
以前、皆の前で ”姉さん”とからかわれた恨みを晴らすべく言った
アマルダは目を輝かせる。
「本当か!?本当に何でも頼んでいいのか!?」
グレンは即座に返す。
「ああ、何でも頼め!」
そしてすぐに付け加える。
「あと兄貴とか兄さんとかやめろ!!」
そう言いながらも、何処か嬉しそうだ。
やがて、テーブルに次々と酒と料理が運ばれてくる。
肉料理、スープ、焼き物、山のようなパン。
どれも湯気を立て、食欲を刺激する。
全員にカップが行き渡ると、グレンがロゼッタを見る。
「ロゼッタ!乾杯の音頭だ!」
突然の指名にロゼッタは一瞬驚いたが、すぐに立ち上がる。
周囲を見渡し、少しだけ照れながらも口を開いた。
「今回も……全員無事で帰ってこれた」
その言葉に、自然と皆の視線が集まる。
ロゼッタはしっかりとジョッキを掲げた。
「乾杯!」
その声に応えるように――
全員がジョッキを掲げた。
肉の焼ける匂い、酒の香り、笑い声。
賑やかな空気の中――
皆が勝利の美酒と料理に舌鼓を打っていた。
ただ一人、凄まじい勢いで料理を平らげている者がいるが……。
その様子を横目に見ながら、グレンが口を開く。
「……ちょっと話があるが、いいか?」
その一言で、空気が少しだけ変わる。
全員の視線がグレンへと集まった。
グレンはロゼッタを見る。
「ロゼッタ。ロベルトさんが作ってくれてる拠点に、
俺も“たまには来てほしい”って言ったろ?」
ロゼッタが小さく頷く。
それを確認して、グレンは続けた。
「その話、乗らせてもらう」
一瞬、間を置く。
「たまには――じゃなくな」
その言葉の意味が分からず、ロゼッタ達はきょとんとした表情になる。
その反応を見て、グレンが苦笑する。
「回りくどい言い方だったよな」
そして、はっきりと言った。
「簡単に言うと――お前のチームに入れてくれってことだ」
その場の空気が止まった。
驚きで、誰も言葉を発せない。
グレンはそのまま続ける。
「ロゼッタ。お前と出会って、まだそんなに経ってないが……」
ゆっくりと言葉を選ぶ。
「お前といると退屈しねぇ。
お前といたら、もっと楽しめると思った」
わずかに笑う。
「俺より強い奴と出会えた、己の弱さを知った。
お前といればもっと強くなれると思った」
そして真っ直ぐに見つめた。
「だからロゼッタ、お前のチームに入れてくれ」
そう言って、ロゼッタに頭を下げた。
ロゼッタは戸惑いながらも口を開く。
「嬉しいけど……いいの?」
少し不安そうな声だった。
「私達、クランも作ってないし……
正直、グレンならもっと上のクランからも声がかかると思う」
その言葉に、グレンは頭をかく。
「強いクランなんて、いくらでもあるさ」
肩をすくめて、続ける。
「ただな……俺が一緒に肩を並べて戦いたいと思ったのは、お前達だ」
言葉に迷いながらも、正直に続ける。
「何て言うかな……居心地がいいんだよ、ここは」
「金とか実績とか、利害関係でつるんでるんじゃねぇ」
少しだけ笑う。
「俺のことを “Bランクハンター”じゃなくて
“グレン” っていう一人のハンターとして見てくれる」
そのまま、言い切った。
「つるんでて楽しいんだよ」
その言葉に、エレナとアマルダが静かに頷き、微笑んだ。
グレンの言葉は、ロゼッタに大きな驚きを与えていた。
この地域で、グレンの名を知らない者はいない。
あの高ランククラン、ホワイトファングのメンバーですら、その名を知っていた。
そんな高ランクハンターが――自分のチームに来る。
嬉しさと同時に、戸惑いが胸に広がる。
その様子を見抜いたかのように、グレンはあえて明るく言った。
「俺のハンターランクの事は気にしないでいい。
むしろ気にしないでくれ」
軽く肩を回す。
「前衛が一人増えたくらいに思ってくれればいい。その方が俺も気が楽だ」
少しだけ口元を緩める。
「Bランクハンターじゃなく “グレン” として暴れさせてくれ」
そして、ロゼッタを真っ直ぐに見る。
「そしてチームの頭は、今まで通りロゼッタ――お前だ」
はっきりと言い切る。
「お前が頭だから、俺やエレナ、アマルダ達もついていってる」
言葉に迷いはなかった。
「俺が入ったからって、方針を変える必要もねぇ」
ゆっくりと続ける。
「お前は今のままでいい。そのまま駆け抜けろ」
その声は、静かだが力強い。
「全員で、お前をサポートする」
その言葉に――
エレナが静かに頷き、アマルダも腕を組んだまま力強く頷く。
リンとミレイアも、それぞれのやり方で同意を示した。
皆の視線が、自然とロゼッタへと集まる。
答えを待つように。
グレンの言葉を聞いて――ロゼッタの中から迷いが消えた。
揺れていた心が、すっと定まる。
その瞳に、再び力が宿る。
ロゼッタは顔を上げ、真っ直ぐにグレンを見た。
「グレン、これからもよろしく」
一歩踏み出し、はっきりと言う。
「ハンターの先輩として、色々教えてほしい」
そう言って、深く頭を下げた。
グレンはその姿を見て、ふっと笑う。
「こちらこそ、よろしくな」
短い言葉だったが、その声には安堵と確かな信頼が込められていた。
そのやり取りを、黙って見守っていたホーゲルが小さく息を吐く。
――いいチームだ。
心の中でそう呟く。
――あいつらも喜ぶだろう。
どこか懐かしむような、柔らかな表情だった。
その空気を破るように、リンが勢いよくジョッキを持ち上げる。
「それじゃあ――新メンバー、新チームに乾杯!」
その声に、皆が反応する。
ロゼッタも、グレンも、エレナも、アマルダも。
ホーゲルも静かにジョッキを掲げた。
「乾杯!」
再び、力強い声が重なる。
ジョッキがぶつかり合い、澄んだ音が響いた。
新しい仲間と、新しい一歩を祝う音だった。
続く
大体一章50話ベースですが、少しオーバーしました。もう少しこの章お付き合いお願いします。
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