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第7章ー49  昔馴染み

前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。


ホーゲルから義手のメンテナンスと、新たな義手の提案を受けたロゼッタであったが、

どのようなものにするかはすぐには決められなかった。


可能性が広がった分だけ、選択は重くなる。



ひとまず義手の件は保留となった。


その後、ハンヴィの整備について話が出たが、こちらは後日に回すことになった。

ガレージは相変わらず忙しく、優先すべき作業も多い。


ひと区切りついたところで、ロゼッタ達は帰る準備を始めた。


セリカは母親が帰ってきたばかりということもあり、しばらくここに残ることになった。


「またすぐ戻るからね」


そう言って、ロゼッタ達を見送るセリカの表情は、どこか嬉しそうだった。


ロゼッタ達はそれぞれ軽く手を振り、車へと乗り込む。


そして――ハブ・ゼロへ向けて出発した。


その車には、ホーゲルの姿もあった。


どうやら、この街に会いたい人物がいるらしい。


走り出した車の中、ロゼッタは窓の外を眺めながら、自分の義手にそっと触れる。


これから先の戦いと、自分の在り方を考えながら――

静かに、思索に沈んでいた。




ハブ・ゼロに到着したロゼッタ達は、その足でハンターギルドへ向かった。

ウエストリバータウンでの戦闘報告と、ホーゲルを交えた食事のためだ。


ギルドに入ると、いつものように賑やかな空気が広がっていた。


グレンが一同を振り返る。


「報告は俺がやっておく。お前らは先に楽しんでろ」


そう言ってから、ホーゲルに視線を向ける。


「ホーゲルさん、各地の情報をギルドマスターに報告したい。すまんが来てくれるか?」


ホーゲルは軽く頷いた。


「ああ、構わない」


それを見て、グレンは満足そうに笑う。

リンがぱっと表情を明るくした。


「やった!お腹ペコペコだったんだ。グレンありがとう!」


そう言って、すぐに空いている席へと向かう。

ロゼッタ達もそれに続き、席へと腰を下ろした。


グレンは最後に振り返り、軽く手を上げる。


「俺達が帰ってくるまで、飲み過ぎるなよ」


軽口を叩きながら、ホーゲルと共に階段を上がっていく。


だが、その瞬間――

ふと見せたグレンの表情は、先ほどまでの軽さとは違っていた。


何かを決意したような、鋭い眼差し。


それを、エレナとアマルダは見逃さなかった。


二人は一瞬だけ視線を交わす。


だが、お互い何も言わない。


騒がしいギルドの中で、その違和感だけが、静かに残った。




グレンとホーゲルは、上階にあるギルドマスターの部屋に入った。

部屋は静かで、下の喧騒が嘘のように遠く感じられる。


机を挟み、グレンが報告を始めた。


「ウエストリバータウンでの戦闘は以上だ」


戦闘の経過、被害状況、討伐したモンスターの規模。

淡々と、だが要点を外さずに語っていく。


その中で――

ギルドマスター エーリヒの指が、机の上で止まった。


「……モンスターの巨大化、か」


視線が鋭くなる。


「それが、人為的な可能性があると言ったな」


グレンは頷いた。


「ああ。ウエストリバータウンのギルドで、モンスターと河の水の調査をしてもらってる」


一拍置いてから続ける。


「一緒に戦った傭兵が言っていた。俺も気になってな」


その言葉に、エーリヒは静かに息を吐いた。


()()()()()か……」


わずかに目を細める。


「お前もそうだが、あいつらも無駄なことは言わん」


低く呟くように続ける。


「……確率は高いな」


部屋の空気が、わずかに重くなる。


エーリヒは椅子に深く腰を預けた。


「何もなかった事に越したことはないが……」


その言葉には、長年の経験に裏打ちされた重みがあった。


グレンも小さく頷く。


「だな」


短い返答だったが、その中に同じ懸念が滲んでいる。


まだ確証はない。


だが――もしそれが事実なら。


静かな部屋の中で、二人は同じ可能性を思い描いていた。




グレンとエーリヒのやり取りが一段落したところで、ホーゲルが一歩前に出た。


「じゃあ、次は俺からだな」


そう言って、各地で見聞きしてきた情報を、淡々と語り始める。


北方の緊張、物流の変化、検問の強化。

南部で再燃しつつある小競り合い。


そして、旧帝国領の ”平穏” 


飾ることなく、“見たまま”をそのまま積み上げていく。


そして――


「南部で、また火種が上がってる」


その一言に、エーリヒの顔がわずかに歪んだ。


「……これから南部進出って時にな」


低く呟いた。


部屋の空気が、先ほどとは別の意味で張り詰める。


その場には、ハンターではないホーゲルがいる。


グレンが眉をひそめた。


「おい、それ……まだ()()()()()()じゃないのか?」


当然の疑問だった。


だが、エーリヒは即座に答える。


「彼は構わない」


視線をホーゲルに向けたまま続ける。


「ハンターではないが、長年ギルドに協力してもらっている」


その言葉に、グレンはわずかに目を細めた。


(……何者だ?)


技術者にしては、妙に隙がない。

ただの流れ者には見えなかった。


その空気を感じ取ったのか、ホーゲルが軽く笑う。


「そんな警戒するな」


肩をすくめながら言う。


「若い頃な、ハンター達と組んで仕事してたことがあるんだよ」


懐かしむような口調だった。


「その中に、偉くなった奴がいてな。今でもそいつに協力してるってわけだ」


そう言って、ちらりとエーリヒを見る。

その言葉に彼は苦笑を浮かべた。


ホーゲルはさらに続ける。


「それと、この街の顔役……グレイヴとも昔からの知り合いだ」


グレンの視線が変わる。


「ロゼッタをグレイヴに託したのも、あいつと相談して決めたことだ」


その一言で、点と点が繋がった。


グレンが息を吐く。


「……そういうことかよ」


納得したように、しかしどこか感心したように言う。


「技術者なのに隙がねぇわけだ。只者じゃないと思ってたが……」


ホーゲルは肩をすくめるだけだった。


その表情には、過去を多く語らない男の余裕が滲んでいた。




ホーゲルの話が終わった後で、グレンがホーゲルに言った。


「エーリヒと話があるから、先に食堂に行っててくれ」


ホーゲルは軽く頷き、「わかった」と短く返すと、扉へと向かう。


その時、エーリヒが声をかけた。


「食事が終わったら、また来てくれ。グレイヴも呼んで、久々に一杯やろう」


その言葉に、ホーゲルの表情が柔らかく崩れる。


「ああ、アイツとは久々だな。積もる話もある。了解した」


そう言って、ホーゲルは部屋を後にした。


扉が閉まると同時に、部屋の空気がわずかに変わる。

外の喧騒が遠くに感じられる中、静寂が落ちた。


グレンはその空気を一度飲み込み、ゆっくりとエーリヒへ向き直る。


「……話がある」


低く、しかしはっきりとした声だった。




続く

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