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第7章ー48  ホーゲルからの提案

前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。


ホーゲルはロゼッタを連れて、ガレージの一角にある作業台へ向かった。


そこは使い込まれているはずなのに、金属片一つ落ちていない。

清潔で、工具の配置にも一切の無駄がない。


ホーゲルは周囲を一瞥し、小さく息を漏らした。


「よく使い込まれてるが……綺麗に使っている」


工具に視線を落としながら続ける。


「配置も無駄がない。さすがだ」


そして、わずかに口元を緩める。


「ソニアさんの旦那さんの整備場なだけある。きちんとしてる」


その言葉に、近くにいた整備員たちが誇らしげに顔を見合わせた。


ロゼッタは静かに頷くと、義手を外し、ホーゲルへ差し出す。

ホーゲルはそれを受け取り、すぐに作業へ入った。


工具を取る動きに迷いはない。まるで流れる水のように自然で、無駄が一切なかった。

義手を軽く持ち上げ、角度を変えながら観察する。


「……見た目は無骨だが、いい仕事してる」


内部を確認しながら、さらに続ける。


「ロゼッタのことを考えて作られてるな。激しい動きにも耐えられる設計だ」


その声には、はっきりとした評価が込められていた。


ホーゲルは手を止めずに問いかける。


「この義手、どこで手に入れた?」


ロゼッタは少し誇らしげに答える。


「ロベルトさんが作ってくれたんだ。旧文明の警備ロボットの部品を使って」


その言葉に、ホーゲルは一度だけ手を止め、軽く頷いた。


「……そうか」


そして、再び作業を再開する。


「ロベルトさんが作ったなら納得だ」


その一言は、技術者としての純粋な称賛だった。


ロベルトはそれを聞いて、照れくさそうに苦笑し、

隣でセリカが、嬉しそうに微笑んでいた。


ホーゲルはロゼッタと会話を続けながらも、手は止まらない。


分解、確認、微調整、再構築——

その一連の流れがあまりにも滑らかで、まるで自分が作ったものをメンテナンスしてるようだった。


それを見守っていた技術者たちの間に、ざわめきが広がる。


「凄い手際だな……」

「動きに無駄がない……」


ロベルトも腕を組みながら、その様子をじっと見つめていた。


ただのメンテナンスではない。


積み重ねてきた経験と、確かな技術がにじみ出ていた。





義手のメンテナンスは、あっという間に終わった。


だが、その場にいた技術者たちは誰もが気付いていた。

同じ作業を自分たちが行えば、倍以上の時間がかかるということを。


ホーゲルは工具を置き、義手を軽く持ち上げて最終確認をする。


「部品の消耗も少ないな」


そう言って、ロゼッタに視線を向けた。


「こまめに自分でメンテナンスしてるだろ。いい事だ」


そして、静かに続ける。


「機械は手をかけた分だけ応えてくれる。逆に、手をかけなければすぐに駄目になる」


その言葉に、周囲の技術者たちが無言で頷いた。

当たり前のことだが、だからこそ重みのある言葉だった。


ホーゲルは義手をロゼッタへ返すと、ゆっくりとロベルトの方を向いた。


「……合格ですかな?」


その声音は冗談めいていながらも、どこか真剣だった。


ロベルトは一歩前に出ると、何も言わず手を差し出した。


ホーゲルもそれに応じる。

二人の手が、がっしりと組まれた。


短いやり取りだったが、それだけで十分だった。


その光景にロゼッタが笑みを浮かべていた。


ロベルトがそのまま口を開く。


「若いのを、何人かつけてもいいですか?ぜひ勉強させたい」


ホーゲルは迷いなく頷く。


「もちろんです」


その返答に、周囲の空気が少しだけ和らいだ。


ロベルトはさらに続ける。


「専門以外でも、気になることやアイデアがあれば、何でも言ってください」


ホーゲルはわずかに眉を上げる。


「認めてもらったとはいえ、私は新入りです……そこまでしていいんですか?」


ロベルトは穏やかに笑った。


「ここは技術者の世界ですよ、年数とか関係ない。()()()()()()()()()()です」


そして、先ほどの作業台を顎で示す。


「さっきのメンテナンスを見て、皆わかっています。あなたの技術と知識の高さを」


周囲の技術者たちも、黙って頷いた。


それを見たホーゲルは、一瞬だけ目を細める。

そして小さく息を吐き、口元に笑みを浮かべた。


(……気持ちのいい場所だ)


胸の内でそう呟く。


(ここなら、久々に自分の腕を存分に発揮できる)


その表情には、どこか晴れやかな色が宿っていた。




ホーゲルの技術に一同が驚いた後、彼はロゼッタに視線を向けた。


「当面は今の義手で十分だと思う」


そう前置きしてから、ゆっくりと言葉を続ける。


「ただ俺としては、義手としてのメリットを最大限生かしたい」


ロゼッタが真剣な表情で聞いている。


「そこで、新しい義手を作りたいと思う」


その言葉に、周囲の技術者たちがざわつく。


ホーゲルは軽く周囲を見回しながら続けた。


「材料については問題ない。ここは宝の山だ。旧文明品以外なら何でも作れるぞ」


その言葉に技術者達が笑う。


「確かにそうだな」

「モノさえあれば旧文明クラスの物も、あんたなら作れるんじゃないか?」


冗談混じりの言葉を、ホーゲルは笑って受け流す。


「方向性としてはいくつかある」


指を立てて示す。


「まずは単純に義手の強化だ」


ロゼッタの義手を軽く叩く。


「強度を高めて、義手自体を篭手として使えるようにする。防具にもなる」


一拍置いて、


「まぁ、近接戦闘用だな」


次に、もう一本指を立てる。


「もう一つは多目的タイプ」


「フックやブレードを内蔵する。内部に小型のエネルギーシールドを仕込めば、盾としても使える」


さらにもう一本指を立てる。


「あと一つは、内蔵火器を搭載するタイプだ」


少しだけ口元を緩める。


「近接と相性がいいのは……ガトリングかショットガンだな」


その言葉に、周囲から小さなどよめきが起こる。


ロゼッタは義手を見つめたまま、動かなくなった。


今の義手でも十分に戦えている。

だが、新しい可能性が目の前に提示されている。


「強くなれるのは、間違いないんだよね……」


小さく呟いた。


ロゼッタの呟きにホーゲルが静かに頷く。


「間違いない。ただし、どれを選ぶかで戦い方そのものが変わる」


グレンが腕を組みながら口を開く。


「今のロゼッタは近接主体だ。なら戦闘用強化か、多目的タイプが無難だな。

火器は……癖が強すぎる」


エレナも続く。


「内蔵火器はロマンはあるけど、整備も弾薬管理も面倒よ。

それにあなたの戦い方だと距離を取る時間が少ないわ」


リンが身を乗り出す。


「でも多目的タイプって面白そう!フックがあれば動きの幅も広がるし!」


ミレイアも小さく頷く。


「盾機能……生存率は上がる」


アマルダは腕を組みながら言う。


「強化型も悪くないぞ。正面から殴り合うなら一番安心だ」


皆の意見が飛び交う中、ロゼッタは静かに目を閉じた。


――自分はどう戦いたいのか。


しばらくの沈黙の後、ロゼッタはゆっくりと顔を上げる。


「……もう少し考えさせてほしい」


ホーゲルは小さく笑った。


「いい判断だ。それはお前の“もう一つの腕”だ。焦って決めるもんじゃない」


ロゼッタは静かに頷く。


その瞳には、迷いと同時に——

新しい力への確かな期待が宿っていた。




続く

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