第7章ー46 再会
前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。
ライラが帰って来たという知らせは、すぐにガレージ中に広まった。
作業の手を止めた者達が次々と外へ出てきて、懐かしそうにライラへ声をかける。
「へぇ、会社辞めてこっち戻ってくることにしたのか。良かったな!」
年配の整備員が満面の笑みで言う。
「ロベルトさん、ずっと寂しがってたからな。ほんと良かったよ」
別の技術者も笑いながら続ける。
久しぶりの再会に、ライラを中心に自然と輪ができ、あちこちで笑い声が上がる。
その空気はどこか温かく、家族のような親しさに満ちていた。
そんな中、ライラがふと思い出したようにロベルトへ向き直る。
「そうだ。ロベルト、1人雇ってほしい人材がいるんだけど」
その言葉に、ロベルトが興味深そうに眉を上げた。
「ほう?」
ライラは軽く頷いて続ける。
「ジャンクタウンに帰ってくる途中でね、乗せてほしいって頼まれてさ。
そのまま話してたら、技術者同士で意気投合しちゃって」
少し楽しそうに笑いながら言葉を続ける。
「ここのこと話したら、“少し落ち着きたい”って言ってたから連れてきたの」
そして、少し真面目な顔になる。
「腕は保証するよ。知識も技術もかなりのものだ。特に義手や義足みたいな機械化関係は凄いね」
その言葉に、周囲の技術者達の表情も変わる。
ライラはさらに続ける。
「護衛で機械化処理してる傭兵がいたんだけど、そのメンテナンスもやってあげててね。
“調子が全然違う” ってかなり好評だったよ」
一流の技術者であるライラがここまで評価する
——それだけで、その人物の腕前が並ではないことは明らかだった。
ロベルトも静かに頷く。
「なるほど……面白そうな人材だな」
ライラがにっと笑う。
「でしょ?ちょっと連れてくるね」
そう言うと、踵を返して自分が乗ってきた車の方へと向かっていった。
やがてライラが、1人の男を連れて戻ってきた。
年はロベルトと同じか、少し上といったところか。
作業服の上から急所を守るための防具を着けている。
立ち姿や視線の鋭さは技術者のそれでありながら、
同時に荒野を渡ってきた者特有の空気も纏っていた。
ロベルトはその男を一目見て、内心で呟く。
(こいつは……只者じゃないな)
ライラがロベルトに紹介しようと口を開いた、その時だった。
「ホーゲル……?」
思わぬ方向から声が上がる。
ロゼッタだった。
その声に、ホーゲルと呼ばれた男がゆっくりと視線を向ける。
そして、次の瞬間——表情が崩れた。
「ロゼッタか!」
落ち着いた雰囲気をまとっていた男が、一気に柔らかな顔になる。
ロゼッタは迷うことなく駆け出し、そのままホーゲルに抱きついた。
突然の出来事に、その場にいた全員が目を見開く。
そんな中、ロベルトが静かに口を開いた。
「どうやら、ロゼッタさんと知り合いみたいだな」
一呼吸置いて、続ける。
「積もる話もあるだろう。まずはそっちを優先してくれ。お前さんとの話は、その後でいい」
そう言って、ロベルトは事務所の方へと歩き出す。
「こっちだ」
案内された一室へ、ホーゲルとロゼッタ、そして仲間達が続いて入っていった。
部屋に入ると、ロゼッタは一歩前に出てホーゲルを見つめた。
「……無事だったんだね」
かすれた声だった。目には涙が浮かんでいる。
ホーゲルは短く答える。
「ああ」
それだけだったが、その一言には確かな重みがあった。
ロゼッタは小さく息を吸い、皆の方へ視線を向ける。
「みんなには……私のこと、話してある。それでも一緒にいてくれる仲間だよ」
先ほどまでの揺らぎは消え、瞳にはしっかりとした意志が宿っていた。
ホーゲルはそれを聞いて、わずかに肩の力を抜く。
「そうか……それなら話しても問題ないな」
緊張が解けたように息を吐いた。
ロゼッタは一歩引き、皆へ向き直る。
「この人はホーゲル。私の命の恩人」
その紹介に、部屋の空気が静かに引き締まった。
ホーゲルが口を開く。
「ロゼッタが皇帝に捕らわれた後……なぜか奴は俺に何もしなかった」
淡々と語り始める声は落ち着いているが、その奥に鋭さがある。
「その後、ある男に連絡を取って、ロゼッタの奪還を依頼したが」
一瞬だけロゼッタを見る。
「どうやら……成功したみたいだな」
短く言い切ると、視線を外す。
「それからは各地を回って情報を集めていたが……最近はどこも妙にきな臭くなってな」
その言葉に、グレンとエレナがわずかに表情を変える。
「ロゼッタがこの辺りで活躍してる話を聞いてな。ここまで乗せてもらった」
そう言って、ロゼッタの方へ目を向ける。
「ライラさんにも勧められて……しばらくここで腰を落ち着けるつもりだ」
話が終わると、部屋に静かな余韻が残る。
ロゼッタはその言葉を聞き、ほっとしたように表情を崩した。
そして——ぱっと、花が咲くように笑った。
話を聞いていたグレンが、一歩前に出る。
「ロゼッタと一緒にハンターをやってる、グレンってもんだ」
軽く名乗った後、視線をホーゲルに向ける。
「さっき“きな臭い”って言ってたな。よければ詳しく聞かせてくれないか?」
ホーゲルは一度だけ頷いた。
「ああ、構わない」
少し間を置き、淡々と語り始める。
「まず北方地域だが……国同士の戦争が起こりそうな気配がある」
部屋の空気がわずかに張り詰める。
「食糧の価格が上がっている。それに加えて、国境付近の検問も強化されている」
グレンが腕を組み、低く唸る。
「典型的な前触れだな……」
ホーゲルは続ける。
「南方地域では、小康状態だった小競り合いが再開している。
元々火種が多い場所だが……今はさらに危険な状態だ」
リンやミレイアも、思わず表情を引き締める。
「比較的安全なのは——まずはハンターギルドがある地域だな」
そこでホーゲルは一度言葉を区切る。
「あとは、企業連合の支配地域と……」
ほんのわずかに声の調子が変わる。
「旧帝国地域だ」
低く、確かめるように呟いた。
続く
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