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第7章ー44  賃貸契約

前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。


話は譲渡ではなく、賃貸という形でまとまった。

ロゼッタは少し落ち着きを取り戻し、ロベルトに向き直る。


「ロベルトさん……月いくらがいいでしょうか?」


そう尋ねるものの、その表情にはまだ戸惑いが残っていた。

ロベルトも腕を組み、しばし考え込む。


その時だった。


「賃貸って言っても、別にお金じゃなくてもいいのよ」


エレナがさらりと言った。

全員の視線が集まる。


「よくあるのは現物での支払い。モンスターの素材とか、遺跡の遺物とかね」


指を折りながら続ける。


「あと、警備や討伐依頼を受ける形での支払いもあるわ。拠点周辺の安全確保とか、そういうやつ」


それを聞いたロベルトが、ぽんと手を叩いた。


「なるほど……それはいい」


表情が一気に明るくなる。


「では、その形にしましょうか。モンスターの素材や遺物は、こちらとしてもありがたい代物です」


さらに続ける。


「警備に関しても、ここは郊外ですからね。周辺のモンスターを討伐してもらえると助かります」


少し笑ってから、付け加えた。


「それに、今後は試作品のテストもお願いするつもりでしたから……

それも“支払い”として含めましょう」


その言葉に、ロゼッタ達は顔を見合わせる。

自然と、自分達にできることで成り立つ関係になっていた。


グレンが軽く頷く。


「話はまとまったみてぇだな」


そして少しだけ真面目な顔になる。


「あと、契約はロゼッタだけじゃなくて、それぞれでやった方がいい」


エレナも同意する。


「そうね。その方がリスク分散になるし」


さらに少し考え、続けた。


「あと、ラベートさんの名前も契約に入れた方がいいかも。

ギルドが関与してる形になるから、より安全になるわ」


ラベートがすぐに頷く。


「わかりました。問題ありません」


ロゼッタも迷いなく言った。


「それでお願いします」


一連の流れを見ていたロベルトが、満足そうに笑う。


「では――最初の家賃ですが」


少し間を置いてから、いたずらっぽく続けた。


「売れたあの車の感想を、しっかり聞かせてもらいましょうか」


その一言に、場の空気が一気に緩む。


思わず、全員が笑った。




事務所に戻ると、すぐに使用契約書が用意された。

ロベルトの手際は驚くほど早く、書類はその場で整えられ、順に回されていく。


「こういうのは、早い方がいい」


ロベルトがそう言うと、グレンとエレナ、そしてラベートも無言で頷いた。

一人ずつペンを取り、名前を書き込んでいく。


ロゼッタが最後にサインを終えた時――


それはただの契約ではなく、彼女達の新しい拠点が正式に“居場所”になった瞬間だった。


書類をまとめながら、ロベルトが顔を上げる。


「さて……では改めて、あの試作車について聞かせてもらえますか」


その言葉に、自然と視線がリンへ向く。

リンは腕を組み、少し考えてから口を開いた。


「走破性能は文句なしだね。荒地でも安定してるし、スピードも出る」


淡々としながらも、その評価は確かだった。


「追跡にもいいし、逆に逃げるときにも使える。軽車両としてはかなり優秀だと思うよ」


少し視線を動かす。


「正直、連装砲がなくても、車単体で欲しがるハンターはいると思う」


その言葉に、ロベルトが小さく頷く。


続いてアマルダが口を開いた。


「武装についてだが――」


いつもの落ち着いた声で語る。


「反動は小さいし、命中率も高い。扱いやすいな」


さらに続ける。


「弾種の使い分けができるのも大きい。そして何より……あの口径で連射が効く」


わずかに口元を緩める。


「車とセットでなくても、武装単体でも売れるレベルだ」


その評価は重かった。


グレンも腕を組んだまま口を開く。


「軽車両のメインウェポンとしてもいいし、大型車のサブとして積んでも使える」


肩をすくめる。


「まぁ……あのホワイトファングが評価して買ったんだ。それが一番の証明だろ」


そう言って笑う。


ラベートも苦笑しながら続けた。


「正直、驚いたよ。父さんの車と武装を、あのホワイトファングが買うなんてね」


少しだけ現実味を確かめるように言う。


「ギルドが知ったら、かなり話題になると思う。車両を欲しがるハンターから注文も来るはずだ」


その言葉に、ロベルトは一度天井を見上げ――


やれやれと肩をすくめた。


「……また忙しくなりそうだな」


そう言いながらも、その顔には確かな笑みが浮かんでいた。




話題は、建設中のロゼッタ達の新たな拠点へと移っていった。

図面や説明を見ながら、その全貌が少しずつ明らかになる。


「……広いな」


アマルダが素直に呟いた。


その言葉に、エレナが苦笑する。


「この間取りの部屋、借りるとしたら……いくらになるのかしらね」


ミレイアも隣で、こくこくと無言で頷いている。


リンが図面を見ながら言う。


「これ……普通は何人かでシェアして住むレベルだよね」


グレンも低く唸るように言った。


「高ランクハンター用の部屋だな、こりゃ」


それぞれが現実味のない広さに、半ば呆れたような反応を見せる中――

セリカだけは、ぱっと表情を明るくした。


「私の部屋、すごく広くなる……!」


純粋に嬉しそうな声だった。


一方でロゼッタはというと、図面を見ながら、少し困ったような顔をしていた。


剣闘士時代、大部屋での生活が当たり前だった彼女にとって、

今借りている部屋でも十分すぎるのに、この広さはもう想像の外にある。


「……広すぎて、どう使えばいいのか分からない……」


ぽつりと漏らすその言葉に、思わず周囲が少し和む。


だが、驚くのは部屋だけではなかった。

建物には大きな食堂があり、複数人が同時に使える会議室や応接間も備えられている。


さらにトレーニングルーム、多目的室もいくつも用意されていた。

敷地内には射撃場まで併設され、車両を何台も置けるスペースも確保されている。


そして――地下室まである。


もはや“拠点”というより、小規模な基地に近い規模だった。


一通り説明を終えたロベルトが、さらりと付け加える。


「将来的には、増築も考えていますよ」


その一言で、場の空気が再び止まる。


「……増築?」


リンが思わず聞き返す。


ロベルトは当然のように頷いた。


「ええ。人も車両も、これから増えるでしょうから」


まるで当たり前の未来を語るような口調だった。

それを聞いて、誰もが言葉を失う。


この場所は、まだ完成ですらない。

それなのに――すでに“その先”を見据えている。


ロゼッタは静かにその建物を見つめた。


ここから始まるものが、どれほど大きくなるのか。

まだ誰にも分からない。


だが一つだけ確かなのは――


この場所が、ただの拠点では終わらないということだった。




続く

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