第7章ー41 親子の団欒
文章のスタイルを少し変えてみました。よろしくお願いいたします。
ソニアの乗った試作車が土煙を残して見えなくなると、ロベルトはその場でふっと一息ついた。
だが、その表情に疲れはなく、どこかやりきったような顔をしていた。
その様子を見ていたラベートが口を開く。
「あのホワイトファングが、父さんの作った車を買うなんてね」
ロベルトは腕を軽く組みながら首を傾げる。
「俺はハンターの世界のことはよくわからんが、そんなに凄いクランなのか?」
少し間を置いてから続ける。
「まぁ、車を武装込みでポンと買うんだ。ただのハンターじゃないとは思っていたが、
お前がそう言うなら相当なんだろうな」
ラベートは小さく息を吐きながら答えた。
「相当どころじゃないよ。ハンターギルドでも五本の指に入るクランだ。最前線で戦ってる連中だよ」
その言葉を聞いても、ロベルトは特に驚いた様子もなく、ただ「そうか」と一言だけ返した。
そして、少しだけ笑みを浮かべる。
「俺はな、高ランククランだから売ったわけじゃない」
ゆっくりと言葉を続ける。
「あの車を欲しいと言った人がいた。そして、売るに値する相手だと思った。それだけだ」
その言葉に、ラベートが苦笑する。
「……父さんらしいな」
隣で聞いていたセリカも笑った。
「ほんとにね」
ロベルトは肩をすくめる。
「まぁ、何にせよだ。初めて作った車が認められて、ちゃんと買ってもらった」
少しだけ視線をガレージの方へ向ける。
「あいつらも喜ぶだろうな。あの車、組み立てたのは若い連中だからな」
ラベートが頷く。
ロベルトはそのまま続けた。
「となると……車両製造の部門も本格的に立ち上げないといかんかもしれんな。
やらせてくれって言ってる奴も何人かいるし」
セリカがすぐに反応する。
「またガレージ建てないとだね」
ロベルトはあっさりと頷いた。
「そうだな」
そして周囲を見回し、軽く笑う。
「まぁ、土地は余るほどあるからな」
三人の間に、穏やかな空気が流れていた。
ロベルトの顔は整備場の責任者の顔から、
1人の父親の顔に戻っていた。
「そういえば父さん」
セリカがふと思い出したようにロベルトに声をかける。
「敷地内でさ、食べ物の屋台が並んでたり、
その辺でキャラバン同士が商談してるんだけど……あれ何?」
ロベルトはその様子をちらりと見て、あっさりと答えた。
「ああ、あれか。修理や整備待ちの客がな、飯食う場所ないかってよく聞いてくるんだよ」
少し肩をすくめる。
「ここ郊外だしな。飲食街や屋台がある所まで行くのは遠い。
だから知り合いに声かけて、ここに屋台出してもらったんだ」
その言葉の先では、屋台の並ぶ一角でロゼッタ達があれこれと品を見ながら選んでいた。
様々な屋台が軒を並べている。
「どれも美味しそう、甘いものはないのかな?」
ロゼッタが迷っていると
「えっ、いきなりデザート?!」
リンが驚いている。
「デザートまで売ってるとはね」
ミレイアが若干あきれている。
アマルダはすでに両手に串焼きを持ち、凄い勢いでかぶりついている。
「……これうまいぞ!」
口いっぱいに頬張りながら言う姿に、周りが思わず笑う。
リンが呆れたように言う。
「ちょっとは味わって食べなよ……」
それを聞いてアマルダは、肉を飲み干し
「失礼な、味わってるにきまってるだろう」
といい、さらに串焼きを買っている。
エレナは屋台を見渡しながら興味深そうに呟く。
「ここ、本当に整備場の敷地内なのよね……ちょっとした市場みたいじゃない」
グレンもエレナの言葉に対して
「そうだな。なんか整備場って感じじゃないな。
キャラバンが集まる ”キャラバン中継地” みたいだな。」
「おっ、このビールうめぇな。親父、もう一杯くれ!」
ロゼッタ達も楽しんでいるようだ。
視線を今度はキャラバンの方へ向ける。
「あと、キャラバンが停められるだけの広い場所って、この辺だとここくらいらしくてな」
苦笑しながら続ける。
「まぁ敷地は余ってるし、迷惑かけなきゃいいってことで許可した。
こっちも街では取り扱いのない部品とか仕入れられるし、都合がいいんだよ」
セリカも苦笑する。
「私も帰ってくるたびに変わっててさ、正直ちょっと驚いてる」
ロベルトはそんな様子を見ながら、笑った。
「人が集まれば、勝手にそうなるもんだ」
簡単に言うが、その言葉通りだった。
整備を求めて来た人間が集まり、
商売が生まれ、
さらに人が集まる。
いつの間にかここは、ただの整備場ではなくなりつつあった。
そんな中、ラベートが少し真面目な顔になり、口を開いた。
「父さん。これはハンターギルド職員としての話なんだけど――」
ロベルトが視線を向ける。
「ハンターギルドを、ここのすぐ側に移設しようって支部長が考えてる」
その言葉に、セリカが思わず反応する。
「えっ、ギルドが?」
ラベートは頷き、続けた。
「トンネルが繋がってから、この街に来るハンターが一気に増えた。
今の支部は住宅地の近くで、車両を止める場所にも困ってる」
少し間を置く。
「拡張も検討したんだけど、将来的なことを考えると難しい。
それで――トンネルに近いこの辺りに移設する案が出てる」
視線をゆっくりと周囲へ向ける。
整備場。
キャラバン。
屋台。
すでに人と物が集まり始めている場所。
「ここなら、父さんの整備場もある。車両や装備のメンテナンスもすぐ出来るし、
ジャンクを求めてキャラバンも来てる」
さらに言葉を重ねる。
「人、物、情報が全部ここに集まる。トンネルの警備も兼ねるなら、
ギルド本部の許可も下りる可能性は高い」
そして最後に、静かに言った。
「父さん。ここは……もっと大きくなるよ」
その言葉を聞いて、ロベルトは一瞬だけ考えるように目を細めた。
やがて、口元に笑みが浮かぶ。
「なるほどな。それがいいだろう」
あっさりとした返答だった。
だがその目は、すでに先を見ている。
「そうなると、集まる人も増えるな」
軽く腕を組みながら周囲を見渡す。
「土地……もう少し買い取るか」
そして、楽しそうに笑った。
「さながら、ジャンクタウン新市街だな」
その言葉に、セリカが目を輝かせる。
「新市街か……なんかすごいことになってきたね」
ラベートも小さく笑う。
「もう“整備場”って規模じゃないよね」
三人の視線の先では、
整備の音、商談の声、笑い声が混ざり合い、途切れることなく響いていた。
この場所は確実に変わり始めている。
そしてその中心にいるのが、ロベルト達だった。
続く
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