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第6章ー30  闇市場強襲作戦3

前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。



その頃――


廃鉱山から少し離れた岩陰。


連絡を担っていた近接班の一人が、本隊へ駆け戻る。


息を整える間もなく報告。


「旧文明の生体兵器が出品されています。

しかも落札済み。実演確認のため奥へ搬送」


本隊の空気が凍る。


指揮官が即座に通信機を取った。


「ギルド本部へ緊急連絡。旧文明遺物――生体兵器案件だ」


数秒の沈黙。


やがて本部からの応答。


声に驚きが混じる。


《旧文明の生体兵器だと?》


情報が伝えられる。


保存状態。

競売。

実演予定。


本部側でもざわめきが起きた気配が伝わる。


そして判断は早かった。


《危険度が跳ね上がった。

現地判断で即時制圧を許可する》


少しの間の後。


《突入を前倒しする》


現場の指揮官が目を細める。


「了解」


さらに指示が続く。


《近接班に伝えろ。

とにかく騒ぎを起こせ》


静かな声だが、切迫している。


《警備の目を内部に集中させろ。

その隙に本隊が突入する》


「……陽動か」


《そうだ。

制御が外れれば、被害は想像できん。

起動前に叩く》


通信が切れる。


指揮官は戻って来た近接班の男に向き直る。


「伝えろ」


短い。


「今すぐ騒ぎを起こせ。

警備の目を引きつけろ。

突入はそれを見て行う」


男は頷き、再び闇市場へ駆け出す。


中では――


棺が奥へ運ばれている。


時間は、ほとんど残されていない。




連絡役のメンバーが戻る。


ダリア達の輪に滑り込み、短く告げた。


「本隊、突入前倒し。

――騒ぎを起こせ。警備を引きつけろ」


一瞬の沈黙。


誰かが低く笑う。


「本隊にわかる騒ぎと言えば……」


別の男が肩を鳴らす。


「やっぱ火事と爆発だな」


ダリアが目を細める。


「派手にやるのか?」


「ちょうどいい場所がある」


案内された先は、関係者用通路の奥。


簡易武器庫。


入口の警備兵は――床に転がっていた。

酒に仕込んだ睡眠薬が効いたのだろう。


「さすが上物だな。よく効く」


扉を開ける。


中は圧巻だった。


木箱が山積み。

違法改造銃、弾薬、爆薬、燃料缶。


火種の宝庫。


誰かが口笛を吹いた。


「……派手にいけるぜ、こりゃ」


一人が手早く箱を開け、部品を取り出す。


金属片、起爆装置、弾薬。

慣れた手つきで即席の時限装置を組み上げる。


カチ、カチ、と乾いた音。


「1分だ、急いで戻るぞ」


全員が頷く。

入り口で眠っていた警備員を、念のため安全で頑丈そうな別の倉庫に放り込んだ


静かに武器庫を離れ、通路を戻る。


大広間へ出た瞬間――


地鳴りのような爆発音。

次の瞬間、廃鉱山が震えた。


武器庫側から火柱が上がる。

照明が揺れ、天井の埃が降り注ぐ。


悲鳴。


怒号。


混乱。


近接班が即座に叫ぶ。


「火事だ!」

「爆発だ!」

「弾薬庫からだ!」


パニックは伝染する。


商人達が商品を抱え、走り出す。

客同士が押し合い、怒鳴り合う。


檻が倒れ、悲鳴が重なる。


煙が流れ込み、視界が霞む。


警備側も混乱する。


「何が起きた!?」

「弾薬庫が爆発?」

「消火班を回せ!」


指揮役が怒鳴る。


「客を誘導しろ!

商品を安全な所に移動させろ!」


警備の視線が、一斉に大広間へ向く。



爆発音が本隊のいる所まで響いた。

外で待機している本隊へ、明確な合図が届く。


黒煙が坑道入口から噴き出す。


突入の狼煙。


指揮官が短く告げる

「突入」


本隊が突入を開始した。




その頃――


爆発の振動は、奥の試験区画にも届いていた。


棺桶型カプセルの表面に刻まれた幾何学模様が、淡く発光する。


黒髪が、ゆっくりと浮く。

瞳が、完全に開く。


煙と混乱の中で。


“死人花”が、目覚める。






爆発の音と振動は、試験区画へも伝わっていた。


その時、棺桶型カプセルの幾何学模様が淡く発光する。


内部から、機械的な声。


《爆発音および振動を確認》

《緊急プログラムに基づき、内部安全を最優先》

《覚醒シーケンス開始》

《ロック解除》


重い音と共に、カプセル上部がゆっくりと開く。

白い蒸気が流れ出る。


その中から、黒髪の女――リコリスが身を起こす。


瞳が開く。


焦点はぶれない。


呼吸は安定。

動作に無駄はない。


爆発の騒ぎは奥まで届いている。

警備の一人が慌ただしく叫ぶ。


「ここも危ない! とにかく脱出を!」


兵器商人に向け落ち着いた声で言う。


「VIP用の脱出ルートをご案内します」


案内役が頷き、壁面の隠し扉を開く。


「こちらです!」


兵器商人はリコリスへ視線を向ける。


「――付いてこい」


命令口調。


一瞬の沈黙。


リコリスはゆっくりと立ち上がる。


裸足のまま床へ降りる。


音が、しない。


まるで影が滑るように、兵器商人の後ろへ立つ。

そして何も言わず、歩き出す。


その動きは完璧だった。

遅れも、迷いも、反抗もない。


兵器商人が満足げに頷く。


「さすがだ。大金を出しただけはある」


だが、闇市場側の管理者が眉をひそめる。


(……おかしい)


(通常は覚醒後に主従措置を施す。

制御コードを登録し、命令権を確定させるはずだ)


だが今回は。


覚醒後――


まだ正式な主従登録をしていない。


それにも関わらず。


リコリスは素直に従っている。


管理者が小声で呟く。


「何故だ……?」


リコリスの瞳が、わずかに動く。


爆発音。

遠くで響く怒号。


その視線は、ほんの一瞬だけ、

脱出路とは別方向――


大広間の方角を捉えた。


まるで。


何かを、感じ取ったかのように。





爆発の余震がまだ地下を震わせている。


VIP用脱出通路の奥。


厚い扉が開かれ、兵器商人が部屋へ入る。


そこには既に数名の上客――

名が知れた大物達が集まっていた。


南部組織の幹部。

武器仲介人。

裏金融の大口。


誰もが険しい顔をしている。


そして――


視線が一斉に向く。


リコリス。


長い黒髪。

無機質なほど整った顔。

覚醒したばかりとは思えぬ安定した立ち姿。


死人花。


かつて闘技場を血で染めた女。


今は――無表情。


瞳に揺らぎはない。


感情の痕跡すら見えない。


「……本物か」


誰かが小さく呟く。


案内役が慌ただしく説明する。


「皆様この度は誠に申し訳ございませんでした。

 皆さまには、船で脱出して頂きます。こちらへ」


壁面の隠し扉が開く。


冷たい水音が響く。


暗い水路に、細長い船が待機していた。

鉱山の排水処理を利用したものだった。


「急いでください!」


上客達が次々と乗り込む。


兵器商人は最後に残る。


振り返る。


リコリスを見つめる。


「――来い」


短い命令。


静寂。


リコリスは、動かない。


一歩も。


瞳が、わずかに兵器商人を見る。

だが、足は動かない。


水音だけが響く。


「……どうした?」


兵器商人の声に、初めて僅かな苛立ちが混じる。


「来いと言っている」


沈黙。


リコリスは――


動かない。


その場に、立っている。

死人花のように。


揺れず。

従わず。


爆発音が、再び遠くで響いた。


そして――




続く


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