表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
250/337

第6章ー28  闇市場強襲作戦

前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。


翌日――

ギルドの奥にある会議室で、ひっそりと作戦会議が行われた。


窓は閉ざされ、灯りは最小限。

机の上には押収品と、例の入場証が並べられている。


ギルドマスターは低い声で告げた。


「今回の任務は強襲だ。だが正面からではない」


視線がダリア達へ向く。


「まずは近接班が潜入する。盗掘団から押収した入場証を使い、奴らになりすます」


ざわめきは無い。

選ばれた者達は既に覚悟を決めている。


闇市場は閉所――地下空間。

通路は狭く、見通しも悪い。

遠距離火器は扱いづらい。


「お前達の役目は二つだ」


机を指で叩く。


「護衛の排除。そして主要人物の捕縛」


「騒ぎが大きくなり次第、外で待機しているギルド部隊が突入する。内部と外部で挟撃し、一気に制圧する」


簡潔で、無駄のない作戦。


だが一歩間違えれば、

狭い地下で袋叩きに遭う危険な任務でもある。


「成功すれば、闇市場は壊滅だ」


短く言い切る。


「失敗は許されん」


重い沈黙。


しかし、ダリア達の瞳は揺れていなかった。


これはただの任務ではない。

奴隷や違法品を扱う連中を断つための一撃。


静かな戦いが、始まろうとしていた。



オルレアは改めて近接班の面々を見渡した。


選抜された者は全員、腕は確かだ。

動きの無駄がなく、立ち姿だけで実力が伝わる。


――だが。


「……」


揃いも揃って、人相が悪い。


鋭い目つき。

傷だらけの顔。

無愛想どころか、今にも喧嘩を売りそうな空気をまとっている。


盗掘団になりすますには、むしろ都合がいいのかもしれない。


そして、


視線の先に、見覚えのある禿頭があった。


興行管理を任されたあの男だ。

今回は表の仕事から裏仕事に回っていた。


違法興行を仕切っていたから

こういう“裏”には慣れていた。


ダリアが初見で認めたように、腕は立つ。

そして何より――口が立つ。


「いざとなれば、俺が話をつける」


禿頭の男は肩をすくめた。


「こういう場所は、刃より舌のほうが役に立つこともある」


確かにそうだろう。


闇市場では、疑いが向けられた瞬間が命取りになる。

斬りかかる前に、誤魔化せるならそれに越したことはない。


オルレアは小さく息を吐く。


腕もある。

口もある。

度胸もある。


……だが。


「もうちょっと、どうにかならなかったのかしら」


ダリアも頷き

「だよなぁ」


誰かが低く笑った。


「よくもまぁ、()()()()()()()()集めたもんだな」


「まったくだ」


闇市場へ向かうのは、精鋭だ。


――ただし、善人の顔をした者は一人もいなかった。彼女達2人を除いて。




三日後――


闇市場が開かれるという廃鉱山へ、ダリア達は到着した。


鉱石はとうに掘り尽くされ、

本来なら風と砂しか通らぬはずの場所。


だが今は違う。


坑道へ続く広場には、無骨な車両が何十台も停まっている。

改造車、装甲車、荷台を補強した輸送車。


「……こりゃ、かなりの規模だな」


近接班の一人が低く呟く。


「想定以上だ」


オルレアは目を細めた。

情報より明らかに多い。

集まっている連中も、ただの小物には見えない。


近接班の一人が、遠方の岩陰へ手信号を送る。


――規模、想定以上。


しばらくして、監視班から返答が来た。

特殊ゴーグル越しにしか見えない微光の信号。


――予定通りに行動せよ。


撤退はない。


ダリア達は静かに歩き出す。


廃鉱山の入口。

仮設の照明と武装した警備が立っている。


空気が張り詰めた。


禿頭の男が一歩前に出る。

入場証を指に挟み、軽い調子で声をかけた。


「お疲れさん。今回は大きな市になりそうだな」


警備の男は入場証を確認しながら鼻を鳴らす。


「ああ、今回はデカいぜ。で、それなりの物を持って来ただろうな?」


禿頭の男はにやりと笑う。


「もちろんだ」


合図と共に、箱が開かれる。


中には宝飾品、希少鉱石、銃器部品――

押収品を偽装した“商品”。


警備が口笛を吹く。


「へぇ……言うだけのことはあるぜ」


禿頭の男は肩をすくめ、懐から酒瓶を取り出した。


「ほらよ、差し入れだ。今日は冷えるからな」


警備は一瞬だけ周囲を見てから、笑って受け取る。


「旦那、悪いね。遠慮なく頂くよ」


瓶を掲げる。


誰も止めない。

警備の一人が蓋を開け、豪快に口をつけた。


「こりゃうめぇ。上物だぜ」


ダリアは視線を逸らさない。


――睡眠薬入り。


効くまで、そう時間はかからない。


坑道の奥からはざわめきが響いてくる。

金の匂いと欲望の声。


闇市場は、すぐそこだ。


一同は足を踏み入れる。


引き返せない領域へ。




近接班は無言のまま内部を進む。


坑道は思ったより整備されていた。

道は舗装され、幅も広い。

簡易照明が等間隔に吊られ、電線が天井を這う。


ダリアは歩幅を崩さず、視線だけを動かす。


――警備二名、角。

――天井に防犯カメラ。

――通路交差部に増援用の待機位置。


オルレアが小さく指で合図を送る。

全員が把握した。


「……これは相当な規模だ」


誰かが低く呟く。


単なる闇取引ではない。

組織化され、管理され、巨大化している。


やがて通路が開ける。


一行は広い空間へと出た。


――その光景に、思わず目を見張る。


そこはまるで地下に出現した“デパート”だった。


三層構造の吹き抜け空間。

鉄骨と足場で組まれた即席のバルコニー。

上階から垂れ下がる照明が、まるで劇場のように中央を照らしている。


中央広場には特設ステージ。


競り台。

ガラスケース。

装飾されたテーブル。


周囲には整然と並ぶ“店舗”。


武器商人の区画では、違法改造銃が壁一面に並び、

刃物は宝石のように黒布の上へ飾られている。


別の区画では、希少鉱石や古代遺物。

封印指定の薬品や軍用グレードのナノ素材。


ざわめきと笑い声。

乾杯の音。

金貨の鳴る音。


香水と油と血の匂いが混ざり合う。


上階のバルコニーでは、仮面を付けた富裕層らしき者達が

ワインを片手に競りを眺めている。


まるで祝祭だ。


犯罪という名の祝祭。


「……違法品のデパート、か」


誰かが吐き捨てる。


煌びやかで、整然としていて、

しかしその全てが腐っている。


ダリアの目が静かに細まる。


ここを壊す。


その為に来た。


オルレアが小さく囁く。


「まずは護衛の配置を把握する」


だがその時――


中央ステージで鐘が鳴る。


「本日の目玉商品だ!」


歓声が上がる。


空気が一段、熱を帯びる。


近接班は人混みに紛れながら、

獲物を探す捕食者のように静かに動き出した。



続く

【作者からのお願い】


もし、「おもしろい」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマーク登録をしていただけるとうれしいです。また「いいね」や感想もお待ちしています!


また、☆で評価していただければ大変うれしいです。


皆様の応援を励みにして頑張りますので、よろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ