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第4章ー③ どうにもならない差

前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。


 受けた依頼は中規模。

 旧採掘地帯に出没する機械獣の群れの掃討。


 新人だけでは危険だが、ベテランが出るほどでもない。

 今の四人には、ちょうどいい――はずだった。


「油断すんなよ」

 グレンが送り際に言った。


「新装備はな、“慣れるまで”が一番危ねぇ」


 その言葉が、すぐに現実になる。


 採掘地帯の崩れた坑道。

 金属が擦れる、嫌な音が反響する。


 ミレイアが止まった。


「……来る」

「右、二。奥、動き速い」


 索敵が一拍早い。

 前なら、もう少し近づかれていた距離だ。


「リン、準備」


「了解」


 リンが銃を構えた瞬間――


 ガシャッ、と床を蹴破り、機械獣が飛び出す。


「前、出るよ!」

 セリカが一歩、踏み込んだ。


 重装防具が、衝撃を受け止める。


 ズンッ――!


 体当たりを正面から受け、わずかに後退するだけで踏みとどまる。


「……効いてるけど、止まる!」


 以前なら、吹き飛ばされていた一撃。


「いい、そこ固定!」


 ロゼッタが横に滑り込み、

 ウォーハンマーを片手仕様に切り替える。


 軽い。速い。


 義手が反動を吸収し、

 体が自然に次の動きへ繋がる。


「はあぁっ!」


 ガンッ!

 関節部へ正確な打撃。


 機械獣の動きが、目に見えて鈍る。


「弾幕、張るよ!」


 リンの銃が唸る。

 以前より反動が抑えられ、連射が途切れない。


 ガガガガッ――!


 装甲の薄い部位を、ミレイアの指示通りに削っていく。


「左脚、あと二秒で崩れる!」


「了解!」


 判断が早い。撃ち続けられる。


 それだけで、戦場が整理されていく。


 残った一体が、ロゼッタへ突っ込んでくる。


 彼女は、下がらない。


 一歩、踏み込む。


(……重くない)


 装備が、邪魔をしない。

 思考より先に、体が動く。


 ハンマーを振り下ろし、

 返す刃でピッグを叩き込む。


 ガン、ゴン、ドン――

 連続打撃。


 オラクルの声が、頭に響く。


《最適解:継続攻撃》

《現在の装備構成、剣闘士式近接戦に適合》


「……わかってる」


 最後の一撃。


 機械獣が崩れ落ち、沈黙した。


 一瞬の静寂。


「……終わった?」

 セリカが息を整えながら言う。


 全員、立っている。

 誰も致命傷を負っていない。


 リンが周囲を確認し、うなずく。


「被害、最小」

「前より、ずっと楽」


リンが笑った。


「火力出せるって、こんなに余裕あるんだね」


 ロゼッタは、自分の手を見つめる。


(装備が、支えてくれてる)


 ただ強くなったわけじゃない。

 役割が、形になった。


 セリカが言った。


「……これ、前に出るの怖くない」


 ロゼッタは小さく笑う。


「大丈夫」

「もう、一人じゃない」


 更新装備の初陣は、

 確かな手応えを残して終わった。


 


  採掘地帯のさらに奥。

 依頼内容では「小型機械獣の残党」とされていた区域。


 ――だが。


 ズ……ン……


 地面が、沈むように鳴った。


「……足音?」

 ミレイアが顔を強張らせる。


 違う。

 足音にしては、重すぎる。


 ロゼッタの喉が鳴った。


(これは……)


 影が、坑道の向こうから現れる。


 全高、三メートル近い。

 旧文明の掘削機を思わせる、四脚型重装機械獣グラトニクス


 前脚には回転ノコ。

 胴体は分厚い積層装甲。


「……聞いてない」

 セリカが呟く。


 ミレイアが即座に判断する。


「撤退――」


 だが、その瞬間。


 ギィィィン――!


 回転ノコが地面を削り、

 土砂と金属片が雨のように降り注いだ。


 退路、断絶。


「受けるよ!」


 セリカが前へ踏み出す。


 ドンッ!!


 衝撃。


 重装防具が、悲鳴を上げる。


「――ぐっ!」


 耐えた。

 だが、一歩、二歩、押し戻される。


「硬い……!」


 リンが撃つ。


 ガガガガッ――!


 弾丸が装甲に弾かれ、火花が散る。


「装甲、抜けない!」


「弱点、見えない……!」


 ミレイアの声が、初めて焦りを帯びる。



「私が行く!」


 ロゼッタは両手持ちに切り替え、

 ウォーハンマーを振り抜く。


「――はあっ!!」


 ガンッ!!


 確かな手応え。

 だが――


 装甲が、凹むだけ。


「……っ!」


 反撃。


 回転ノコが、横薙ぎに迫る。


「ロゼッタ!」


 跳ぶ。

 転がる。


 ギリギリで避けるが、

 衝撃波で壁に叩きつけられる。


 肺から、息が抜けた。


(足りない……)


 打撃は通る。

 だが、決定打にならない。


 オラクルの声が冷静に告げる。


《分析:武器質量不足》

《現行ウォーハンマー、対重装個体において有効打率34%》


 数字が、胸に突き刺さる。


「脚、狙う!」

 ミレイアが叫ぶ。


 リンが弾幕を集中。

 セリカが必死に前を塞ぐ。


 ロゼッタが側面へ回り込み、

 関節部へ全力で叩き込む。


 ゴンッ!!


 ――きしむ音。


 効いている。

 確実に。


 だが。


 止まらない。


「っ……!」


 武器を握る手が、痺れる。

 義手が反動を吸収しきれない。


(もっと……重さが……)


 ノコが振り下ろされる。


「下がれ!!」


 セリカが割り込む。


 ガァンッ!!


 装甲が削れ、

 セリカが膝をつく。


「……まだ、いける……!」


 その声が、ロゼッタの胸を締めつけた。


 ミレイヤの判断は、速かった。


「煙幕! 撤退!」


 閃光と煙。

 視界が白に染まる。


 四人は、転がるように逃げ出す。


 背後で、機械獣の低い駆動音が鳴り続けていた。


 安全圏。


 全員、息を荒くして座り込む。


 誰も、倒れていない。

 致命傷もない。


 ――それでも。


「……倒せなかった」


 ロゼッタの声は、震えていた。


 ハンマーを見る。

 傷だらけの先端。


(通じなかったわけじゃない)


 でも、足りなかった。


 セリカが歯を食いしばる。


「私が……もっと耐えられれば……」


「違う」


 ロゼッタは、首を振る。


「武器だ」


 はっきり言い切る。


「私の武器が、あれに届いてない」


 オラクルが、静かに追撃する。


《結論:対重装・対大型個体用の主武装が必要》

《現行装備は“中量級まで”に最適化されている》


 わかっている。

 だから、悔しい。


 ロゼッタは拳を握る。


(次は……)


 次は、叩き潰す。


 その悔しさだけが、

 胸の奥で、静かに燃えていた。



続く

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