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第4章ー② 覚悟の装備

前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。


 討伐祝いの喧騒が一段落し、夜のギルドが少し落ち着きを取り戻した頃。

 ロゼッタたちは、壁際の丸テーブルを囲んでいた。


 机の上には、討伐報酬の明細と、ギルド保管庫から渡された《プルータス》の素材リスト。

 分厚い装甲殻、歪んだ動力関節、そして回転式削岩アームの中核部。


「で……クラン、作る?」

 ミレイアが、冗談めかしながらも本気の目で言った。


「今なら注目もあるし、名前売るにはちょうどいいよ」

 とリンが続ける。


 ロゼッタは少し考え、視線を素材の一覧へ落とした。


「……まだ、早い気がする」

「私たち、まず“生き残れる装備”が欲しい」


 その言葉に、セリカが大きくうなずいた。


「うん。クラン作っても、装備が追いついてなかったら意味ない」

「特に……前に出る人の分」


 自然と、全員の視線がセリカ自身へ向く。


 彼女は照れたように頭をかいた。


「重装は、消耗も激しいしね。今のは“作業着”に近い」

「プルータス素材なら……本物が作れる」


 ロゼッタは決断したように立ち上がった。


「じゃあ決まり」

「まずは防具を更新しよう。私たち全員が、次に進むための」



―― セリカの師匠の工房


 翌日。

 朝の光が差し込む工房で、セリカの師匠――

 無骨な体格に、年季の入った眼をした親方が、素材を前に腕を組んでいた。


「……プルータス、か」

「よく生きて帰ったな、お前ら」


 親方は分厚い装甲殻を叩き、金属音を確かめる。


「正直に言う」

「これ、扱える鍛冶屋は少ねぇ」


 セリカが一歩前に出る。


「……お願いします」

「私が手伝います。設計も、加工も」


 その言葉に、親方は一瞬だけ表情を緩めた。


「いいだろう」

「ただし条件がある」


工房の奥を指さす。


「今回は、セリカが主で打つ」

「俺は口を出すだけだ」


セリカの目が見開かれる。

「えっ……」


「逃げるな」

親方の声は低く、だが温かい。

「お前の仲間の防具だろ」


ロゼッタたちは顔を見合わせ、自然と笑みがこぼれる。


装備更新――

それは単なる強化じゃない。


四人が、

次の段階へ進むための儀式だった。


「はい!」


 即答だった。


新しい防具の方向性


 工房の中で、火が入り、工具の音が響き始める。


プルータス装甲殻:

 → 衝撃分散と耐弾性を重視した胸部・肩部装甲へ


動力関節素材:

 → 重装でも可動域を殺さない関節補助構造


削岩アーム中核:

 → 防具内フレームの要として再利用


 ロゼッタは、作業するセリカの背中を見つめていた。


 仲間のために、

 命を預ける装備を、自分の手で作ろうとする背中。


(……強くなるって、こういうことなんだ)


 派手さはない。

 だが確実に、次の戦いを見据えた選択だった。


 クランは、まだ先。

 今は――


「生きて帰るための防具」を作る。


 火花が散る工房の中で、

 ロゼッタたちの次の一歩が、静かに形になり始めていた。


 工房の中で、火が入り、工具の音が響き始める。


プルータス装甲殻:

 → 衝撃分散と耐弾性を重視した胸部・肩部装甲へ


動力関節素材:

 → 重装でも可動域を殺さない関節補助構造


削岩アーム中核:

 → 防具内フレームの要として再利用


 ロゼッタは、作業するセリカの背中を見つめていた。


 仲間のために、

 命を預ける装備を、自分の手で作ろうとする背中。


(……強くなるって、こういうことなんだ)


 派手さはない。

 だが確実に、次の戦いを見据えた選択だった。


 クランは、まだ先。

 今は――


「生きて帰るための防具」を作る。


 火花が散る工房の中で、

 ロゼッタたちの次の一歩が、静かに形になり始めていた。


 工房の炉が、数日間ほとんど休むことなく燃え続けた。

 叩く音、削る音、金属が冷却される蒸気音が、昼も夜も途切れない。


 親方は言った。


「全員分やるなら、中途半端はなしだ」

「命預ける装備だ。覚悟しろ」


 セリカは、その言葉に一番深くうなずいていた。


夜。


工房の隅で、三人は簡単な食事をとっていた。

金属音は止まず、親方とセリカはまだ炉の前にいる。


「……セリカ、真剣だね」

ミレイアが小声で言う。


「うん」

リンも頷く。「前より、背中が大きく見える」


ロゼッタは黙って、その背を見つめていた。


かつて、自分が剣闘士だった頃。

同じように、炉の前で夜を越えたことがある。


その記憶に、懐かしさと――少しの痛みが混じる。


――《分析:貴方は現在、安心しています》


(……そうかもしれない)


――《この環境は、戦闘前の心理安定に寄与します》


ロゼッタは、わずかに口元を緩めた。


「……いい装備ができそうだね」


誰に向けた言葉でもない、その一言に、

リンとミレイアが笑って頷く。


炉の火はまだ消えない。

だがその炎は、破壊のためではなく――


次に生き延びるための力を、静かに形作っていた。



工房の炉が、数日間ほとんど休むことなく燃え続けた。

叩く音、削る音、金属が冷却される蒸気音が、昼も夜も途切れない。


 親方は言った。


「全員分やるなら、中途半端はなしだ」

「命預ける装備だ。覚悟しろ」


 セリカは、その言葉に一番深くうなずいていた。



■ セリカ ―― 重装前衛の完成形


 まず手を付けられたのは、セリカ自身の防具だった。


 プルータスの装甲殻を基礎にした重装鎧。

 無骨だが見るからに堅牢さが伝わる、装飾は一切ない。


胸部・肩部:

 厚い多層装甲。銃弾・衝撃を分散する構造


関節部:

 旧文明の動力関節素材を使った補助フレーム


背部:

 重量を分散する内骨格。長時間の前線維持を想定


「……重い、けど」

 セリカは腕を振り、踏み込んでみせる。


「ちゃんと動く」


 親方が満足そうに鼻を鳴らした。


「前に立つための装備だ」

「逃げるためじゃねぇ」


 セリカは、その言葉を誇らしそうに噛み締めた。




■ ロゼッタ ―― 剣闘士のための防具


 ロゼッタの装備は、方向性がまったく違った。


「重くするな」

「動けなくなったら、意味がない」


 彼女自身の要望だった。


上半身:

 薄型ながら高強度の装甲プレート


腰・脚部:

 可動域を最優先した軽装構成


右腕義手:

 内部フレームを再調整し、反動吸収と安定性を向上


 プルータス素材は、要所だけに使われている。


「……動けます」

 ロゼッタは静かに言った。


 構えた瞬間、身体が自然に前へ出る。

 昔の剣闘士の感覚が、違和感なく蘇る。


(今度は ”向き合える” )


 その確信が、胸の奥で灯った。


■ リン ―― 火力支援の最適化


 リンは銃を中心に装備が組み直された。


防具:

 中装クラス。反動耐性と被弾時の衝撃軽減を重視


背部ユニット:

 弾薬携行量を増やすフレーム


腕部:

 射撃安定用の補助装置


「うわ、実用一点張りだね」

 口ではそう言いながら、リンは楽しそうだった。


「でもこれ、撃ち続けられる」


 長期戦を想定した、止まらない火力。

 パーティ全体の安定感が、確実に上がる構成だった。


■ ミレイア ―― 機動と索敵の要


 ミレイアの装備は、一見すると地味だった。


だが、親方は言った。


「こういうのが、一番死なねぇ」


軽装防具:

 機動力最優先


センサー補助部品:

 旧文明部品を使った索敵強化


足回り:

 不整地対応の可動補助


 ミレイアは歩き、走り、止まり、すぐに理解した。


「……視界が広い」

「気配が、前より早くわかる」


 罠、奇襲、増援。

 それらを最初に察知する役割を、確実に果たす装備だった。


 


 数日後、工房の前。

 夕方の光の中で、四人が並ぶ。


 誰一人、派手じゃない。

 だが――


「……すげぇな」

 通りすがりのハンターが、思わず呟いた。


 親方が腕を組み、言う。


「これで死んだら、使い方が悪い」

「生きて帰ってこい」


 ロゼッタは、仲間を見回し、小さく笑った。


「行こう」

「次は、この装備で」


 ただ強くなるためじゃない。

 全員で帰ってくるために。


 新しい装備は、

 そのための“覚悟”そのものだった。



続く

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