爆発オチなんてサイテー!
待たせたな!半分鬱になりかけた蛇だ!
………評価してくれてもええんやで?
―――転生して約2ヶ月。
結論から言うと、あれから一度も試練は受けていない。
この世界に転生した時にも痛みはあったが、死んで転生するのに時間がかかったのかあまり現実味がなく、死の恐ろしさを理解できていなかった。
いや、死というものを理解できると考えるほうがおこがましいか。
それほどまでに死とは恐ろしく、二度と味わいたくないものだった。
正直言って9もの生命は必要ない。死は一度で十分だ。
あの空間が何なのかはよく分からないが、精神世界とか、そういう類のものだと思っている。
あの後固有スキルを確認してみても数字は減っておらず、(8)のままだった。
『返して』…あれがどういう意味だったのか…たった一瞬、たった一度の出来事だったが、別に私はバカではないと自負している。
おそらくあれは―――
「ほーぅらっ!集中が途切れてるわよ!」
頭にザラリとした感触を感じ、思考の海から脱却する。
「もっと深く!その状態をキープして!」
私が今何をしているのかって?
全ッッッ力で猫流のストレッチをかましている。
2ヶ月間問題なく動けるようになってからずっとやらされているルーティーンだ。
何なのかは正直分からない。
母さん曰くはじめて魔法を使う上でとても重要な事らしい。
運動とかで感じるものの比じゃないくらい身体が熱く感じる。
「母さんこれいつまで〜?あ゛つ゛い゛…」
「ん〜…あと5分くらいかしら?」
あと5分って、もう既に30分弱続やってるんだけど。
結局5分どころか20分くらい続いた。
「よ〜し!身体があったまったところで!」
「あったまるのレベルじゃないよ母さん…」
「そろそろ魔法を使いましょう!」
「おお〜!」
魔法!どうやるんだろう…?!
「まずはえーっと、今身体の内がとてもあったかく感じると思うんだけど、それが"氣"っていう生命エネルギーなの」
氣…?前世で聞いたことあるけど…魔法なのに?
「感じるけどそれがどうしたの?」
「うーん…なんて言うのかしら…?えー…?」
「不安!すごく不安だよ母さん!」
「感じるなら、かすかにまわりが冷たく感じない?」
目を閉じて、身体の外に意識を向けてみる。
感覚を研ぎ澄まして…みる。
なんか…ある?かも…夏の校庭で出てるスプリンクラー浴びてる感じで。
ヒヤッ…とほんの少しだけ。
「うん…?そう、かな…?確かにほんのチョビっと
だけ感じるかも」
「あら、思った通りあなた魔力が少ないのね。たまに居場所がわからなくなってたのだけど、やっぱりね。」
ウソー?!
たしかにこの2ヶ月、よく私の事探してたけど!
「えー?こういう転生モノって魔力が他より多かったりするんじゃないの…?」
「かわりにあなた9つも生命があるじゃない」
そっか…じゃあ文句は言えないなぁ。
「まぁ大丈夫よ!魔力を扱えば扱う程その量が増えてくるから!」
そういうものなんだ……
「ここからどうすればいいの?」
「んと、その魔力をどこでもいいから1カ所に集められるかしら?」
「どうやって?」
「それが説明し辛いのよねー。血管から逆流させる感じ?」
「イメージがつかない…」
血管…人間ならまだかろうじて意識できたかもしれないけれど、今の肉体は毛むくじゃらの猫だ。難しい…
「あ!いけないいけない。コレ言っとかないと」
「何?」
多分真剣な顔つきをしていると思われる母さんがこっちを見つめる。
「絶対に魔力と氣力を同時に動かしちゃダメよ」
「なんで?」
「身体が爆発しちゃうから」
「なんで?!!!」
「それぞれ血管の中で反対向きに流れてるから同時に使うと力が衝突してありとあらゆる血管が爆発するわ。昔の人間は知らずにやって町中で爆発する事故が絶えなかったそうよ。私達動物や魔物は直感でわかるけど」
「こっっっわ!それ1番最初に言うべきことじゃん!」
危うく2ヶ月で第2の生を終える所だった…
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「こうか…?ありゃ、違うな…?」
やっぱりどうも猫の身体だとうまく意識できない…
太陽はもう半分以上大地に身を隠している。
「ふにぁぁぁ…ずーいぶん時間かかってるわね…」
「普通はスッとできるものなの?」
「そ~ねぇ~やっぱり転生者で身体の勝手が違うっていうのが足を引っ張ってるのかしら…」
「あ~!もう疲れた!母さんちょっとモフらせて!」
「やァよ集中しなさい」
と、言いつつモフらせてくれる母さんは神様か何かか?
「どこに魔力を集めるかは決まったの?」
「一応尻尾…かな。多分1番安定するんだ」
「私も初めては尻尾だったわぁ…」
なにか嫌な思い出があるようで遠い目をする母さん。
「私は魔力を引っ張る感じなのよねぇ…」
何か一方向に強く引っ張るイメージ…掃除機とか?
強烈な吸引力…
はっ!
あったじゃないか!自分が1番イメージしやすいやつが!
「ちょっ!またぁ?」
そう言われるが無視して母さんのモフモフの毛の中に頭を突っ込む。
すうぅぅぅーーはぁぁぁーーー
そう!猫吸いだ!
息と共に冷たい感覚が全身から尻尾に移り込んでくるる。
いける…!今なら…!
「ペネトラーテ・スティーリア!」
くわっとそう叫び、茜色に染まる夕天を仰ぐ。
尻尾の先端冷たい感覚が包み込み―――
ポンッ!
「ウ゛ニ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァッッッッ!!!」
魔力が小さく爆ぜ、尻尾の先が焦げた。
母さん曰く、そのまま魔力切れで気絶したという。
爆発オチなんてサイテー!
主人公が焦げたのは初めてなのに詠唱もせず魔法陣も構築しないで大技ぶっ放そうとしたから。
ちなみに魔力をバカ込めると街一つ滅ぼせる。
本来この世界の魔法は詠唱が必須。
どこまで省略できるかで魔術師の階級が変わる。
階位は
序詠級 詠唱・魔法陣・魔法名が発動条件
破詠級 魔法陣・魔法名が発動条件
画滅級 魔法名が発動条件
虚名級 思うがままに発動できる
魂刻魔法や新しい魔法には詠唱や魔法陣が必要ないものもある。
※わかりにくいと思うので解説すると、
魂刻魔法は自分だけの魔法。それまでの魔法とはまったくの別物でスキルに近い。
自分で編み出した魔法は覚えれば誰でも使える。
母猫は画滅級。十分凄いが直感派なので教えるのがヘタクソ。




