8 道化と大誘拐 おまけ
――どこかの場所、どこかの時間。
薄暗い空間にいくつかのロウソクの火が揺らめいている。そこは日の光の届かぬ地下、長く放棄されたままになった小さな劇場のようであった。
怪しい雰囲気の中で足音が響く。ひとり黒衣の少女が舞台へと上がり、客席の最奥に置かれた玉座から舞台を見下ろす魔術師のような姿の女へと一礼した。
「失態だな、ポーピアス」
女が少女に重々しく呟いた。
少女は顔を上げ、叱責されているにも関わらず何故かにこやかに女を見る。
「シッタイ? ピアスちゃんがシタのはシッパイ! ウッヒヒヒー!」
「どちらでもよい。作戦自体はどうでもいいものだったから構わんが、貴重なイスファンクと秘宝を失ったのはどう責任を取るつもりだ」
「またガンバるよー! おー!」
屈託のない笑顔だった、そこには失意も反省も全く感じられない。
「……はぁ。もういい、下がれ」
「はぁーい」
ポーピアスと呼ばれた少女が舞台袖へと姿を消した後、客席からまばらな拍手が響く。
その一方で魔術師風の女は軽く頭を抱えた。
「動作に問題はないが命令を途中で忘れかけるとは……、まだ完成とは言えぬか。だがこれでしばらく帝都には近付くまい。それにしても――」
女は手にしたグラスを傾けた。
「私の邪魔をするとは、何を考えている? スピネラスめ……」
ゆらめく灯りに照らされたその顔は、かつてドルフに地図を渡した占い師であった。




