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第19話 エンタメ化計画

「……はぁ。本当に、最後の最後まで手続きの面倒な泥舟ですわね。私の高級ローストビーフを食べる時間を奪おうだなんて、万死に値しますわ」


 元国王からの不快な嫌がらせ手紙を読み終えた瞬間、私の周囲の空気が絶対零度へと凍りついた。


 旧王国の残党が、闇の商人ギルドへ売却したという『太陽神の裏の呪具』。披露宴の最中に発動し、帝都全体に最悪の天変地異を引き起こす呪いのアイテムだ。せっかくアリア様とルシアス陛下が誓いのキスを交わしたというのに、往生際が悪すぎる。


「リリア補佐官、どうしたの? そんな魔王みたいな顔をして」


 オフィスの扉を開けて入ってきたセリア様(元シャーロット様)が、私の殺気に満ちた笑顔を見て小さく肩をすくめた。その隣には、相変わらず楽しそうな魔法大国の第一魔法帥ギルバート様もいる。


「セリア様、ギルバート様。ちょうど良いところに。旧王国の生ゴミが最後の遺言(嫌がらせ)を遺していきましたわ。披露宴の会場に、闇の呪具が仕込まれているようです」


「あら、それは不愉快ね。私が今すぐその闇の商人を闇に葬ってこようかしら?」


「いいえ、必要ありませんわ。せっかく世界中の王族が集まる華やかな披露宴です。その呪い、すべて【最高級の余興(イリュージョン)】として、私たちの手で美味しく再利用して差し上げましょう」


 私は手帳をバチンと開き、わずか30秒で『呪具強制エンタメ化計画』の裏書を完成させた。


     * * *


 王宮の超巨大な披露宴会場。

 きらびやかな衣装を纏った各国の王族や貴族たちが、最高級のお酒と料理を手に、新婚の二人を祝福していた。ひな壇では、ルシアス陛下がアリア様に「アリア、このお肉は柔らかいぞ、あーんしてやろう」「ル、ルシアス陛下、みなさんが見ていますから……!」と、すでに完全無欠のバカ夫婦(甘々モード)を披露している。


 その披露宴が最高潮に達した、まさにその時だった。


 ゴゴゴゴゴ……と、会場の床から不気味な地鳴りが響き、天井がパチパチと赤黒い稲妻に覆われ始めた。

 会場の貴族たちが「な、何事だ!?」「敵襲か!?」とパニックに陥りかける。


「皆様、ご安心ください! これより、ガルディア帝国が誇る筆頭補佐官リリアと、魔法大国アルカディアによる、新郎新婦へ捧げる【光と闇の超魔導イリュージョン・ショー】を開演いたしますわ!」


 私が会場のバルコニーから拡声魔導具で高らかに宣言すると、パニックになりかけていた貴族たちは「おお……演出か!」と一瞬で納得し、ワクワクした目で天井を見上げた。なろう読者の皆様、これが私の『情報操作(事務処理)』の手際ですわ。


「いくよ、リリア補佐官! 闇の呪具の魔力供給ラインを、僕の空間魔法で全て上空の『花火打ち上げ用魔術陣』へ強制転送(パスチェンジ)する!」


 ギルバート様が白銀の髪をなびかせながら指を鳴らすと、床から噴き出しそうになっていた赤黒い呪いのエネルギーが、ぐにゃりと空間ごと捻じ曲げられた。


「セリア様、仕上げをお願いしますわ!」

「任せて。旧王国の不法な呪具資産、ガルディア帝国の名において【全額没収(データ全消去)】よ!」


 セリア様が会場の隅に隠されていた闇の呪具(不気味な骸骨の像)を木っ端微塵に粉砕すると同時に、私は手帳の魔導印章を書類にドンッ!と捺印した。


『旧王国の隠し魔導契約、第一管理者の権限により強制終了(シャットダウン)。すべての余剰魔力を、お祝い用の【五色絢爛な祝福花火】へと変換処理いたします!』


 ドガァァァァァン!!


 次の瞬間、大夜空に向かって、赤黒い呪いだったはずの膨大なエネルギーが、見たこともないほど巨大で美しい「七色の星型花火」となって一斉に弾け飛んだ。帝都の夜空が、まるでお昼間のように美しく輝く。


「わあぁぁぁ……! 綺麗……! ルシアス陛下、見てください、とっても綺麗です!」

 アリア様が窓の外を見上げて、少女のように目を輝かせて歓喜の声を上げる。


「ああ、本当に美しいな、アリア。だが、お前の方が何倍も美しい」

 ルシアス陛下は花火など一瞥もせず、アリア様の横顔を見つめて再び限界オタクの表情で惚気けていた。


 会場の王族たちからは「素晴らしい演出だ!」「さすがガルディア帝国、呪いのエネルギーすら花火に変えるとは!」と、割れんばかりの大喝采が巻き起こる。


 こうして、泥舟国家の残党が放った最後の嫌がらせは、私たちの有能さによって、ただの新婚夫婦を引き立てるための「最高の引き立て役(ざまぁ)」として綺麗さっぱり消費されたのだった。ちなみに、この呪具を売却した闇の商人ギルドは、セリア様の手によって明日までに経済的に完全解体されることが決定している。


(ふふ、これにて本当に、すべてのゴミ掃除が完了いたしましたわね)


 私はようやく、給与5倍のホワイトな環境で、最高級のローストビーフを一切れ口に運んだ。とろけるような美味しさに、徹夜続きだった前国での苦労が全て報われる。


 美味しい料理を堪能し、定時退社の時間が近づいてきたその時。

 雛壇からこちらへ歩いてきたルシアス陛下とアリア様が、私の前に並んで、信じられないほどの笑顔で一通の『純金の特製魔導書状』を差し出してきた。


「リリア。お前のおかげで、私たちは最高の結婚式を迎えることができた。これは我が帝国からの、一生分の感謝の印だ」


「リリア様、受け取ってください!」


 受け取った手紙を開いた瞬間、私の優秀な頭脳が、本日何度目か分からない驚愕でフリーズした。

 そこに書かれていたのは、明日から始まる、私の想像を絶するような【真の最高級ホワイトライフ】の全貌だった――。


読んでいただきありがとうございます!

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次回もお楽しみに!

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